北海道新幹線、開業を地域活性化に生かせ
北海道新幹線(新青森-新函館北斗、約149キロ)が開業した。1964年の東海道新幹線開業から半世紀余りを経て北海道から本州、九州まで初めて新幹線でつながった。
当面厳しい収支見通し
北海道新幹線は東北新幹線と相互乗り入れし、2030年度には札幌市への延伸も予定されている。整備計画の決定から43年。悲願が実った地元では歓迎ムードが盛り上がっているが、運営には課題も多い。
経済効果は年間約136億円と試算されている。だが、東京-新函館北斗の最短所要時間は最短4時間2分で、空路より新幹線が優位に立つとされる“4時間の壁”を破れなかった。
このため、東京圏からの観光客が大幅に増える可能性は低いとみられる。収支は18年度まで毎年48億円程度の赤字が見込まれており、新幹線効果が本格的に表れるのは札幌延伸後となりそうだ。
困難なスタートとなるが、せっかくの開業を生かしたい。開業によって、新函館北斗と青森、盛岡、仙台とは約1時間~2時間半で結ばれるようになる。東北地方の各空港から北海道に向かう空路は少ないため、東北との連携強化が北海道新幹線の活路となろう。
北海道と東北の観光名所を組み合わせたツアー商品で外国人観光客を誘致するなど知恵を絞りたい。訪日客の少ない東北にとっても、開業はチャンスとなるのではないか。
北海道新幹線に関しては、安全確保も大きな課題となる。約149キロのうち約82キロの区間が新幹線で初めて貨物列車と共用走行となる。さらに約54キロが青函トンネルであることに加え、厳冬期には過酷な環境下で運用することになる。青函トンネルでは15年4月、特急列車の発煙トラブルも起きた。
運行を担うJR北海道はここ数年、相次ぐ事故のほか、レール異常放置や運転士による自動列車停止装置(ATS)破壊などの不祥事に揺れてきた。路線の大半が赤字のため、1987年の国鉄民営化の際に受け取った「経営安定基金」の運用益で赤字を穴埋めしているが、景気後退で運用益が減少し、安全確保のための投資が不十分になったことが一連のトラブルの原因だったとされる。
これとともに、労働組合の影響力の強さも指摘された。経営陣が労組に遠慮して安全確保策を強化できなかったことが背景にあったのだ。
JR北海道はトラブルを受け14年に経営陣を刷新し、15年には安全投資に関する5年計画を発表した。複雑な運行管理と高度な保守点検が求められる北海道新幹線で事故を防ぐには、社員の能力とともに安全意識を高める不断の取り組みが必要だ。
新幹線の開業に併せ、JR北海道は普通列車全体の7%に当たる79本を減便し、利用が少ない8駅を廃止した。やむを得ない判断だが、いかに地域の足を確保するかも課題だ。
まずは安全最優先で
しばらくは厳しい運営が続くが、まずは安全最優先で楽しく快適な旅を乗客に提供することに徹するべきだ。車内サービスにも工夫を凝らしてほしい。