GDPマイナス、消費増税の影響が大きい
日本経済は景気拡大の力強さを欠いたまま、またマイナス成長に転じてしまった。4~6月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0・4%減、年率では1・6%減と3期ぶりのマイナス成長である。
景気の足を引っ張った個人消費や輸出の低迷に一時的要因が少なくないとはいえ、昨年の消費税増税の影響が今なお色濃く残っていることを浮き彫りにした。景気の先行きには要注意である。
個人消費が振るわず
昨年4月の消費税増税以降、2期連続のマイナス成長の後、2014年10~12月期に0・3%増、15年1~3月期は1・1%増と回復していたが、再びマイナスへの転落である。
寄与度を見ると、内需マイナス0・1%、外需同0・3%と外需の方が足を引っ張った度合いは大きい。輸出がアジアや米国向けの低迷で4・4%減と6期ぶりにマイナスとなったことが響いた。
もっとも、前1~3月期の寄与度は、外需が今回同様マイナス(0・1%)なのに対し、内需はプラス1・2%と十分にカバーしていたから、4~6月期は輸出の低迷もさることながら、内需がいかに落ち込んだかを示している。
内需のうち影響が大きいのはやはり、GDPの約6割を占める個人消費の不振である。
0・8%減と、増税直後の14年4~6月期以来4期ぶりのマイナス。この不振には、甘利明経済財政担当相が指摘するように、今年6月の天候不順など一時的な要因もなくはない。エアコンや衣類など季節物商品の販売にブレーキがかかったことは確かである。
ただ、円安による食料品や日用品などの値上げが相次ぎ、消費者の買い控え・節約志向も相変わらず根強い。今回は実質雇用者報酬が6期ぶりにプラス(前年同期比0・7%増)となったが、この程度では消費者心理を上向かせるには不十分ということなのであろう。
そして何と言っても、消費税増税の影響が自動車業界を中心に依然として尾を引いていることである。自動車業界はさらに軽自動車税の引き上げのダブルパンチである。自動車産業は裾野が広いだけに、販売の低迷は鉄鋼メーカーの鋼材在庫の積み上がり、減産につながるなど影響は小さくない。
景気拡大の牽引(けんいん)役として期待される企業の設備投資も、今回は3期ぶりにマイナス(前期比0・1%減)に転じた。甘利担当相にすれば「過去最高の企業収益に見合った水準とは言えない」と不満の出る結果だが、企業にとっては需要が相応に見込めなければ、やはり積極的にはなれないということであろう。これも経済の好循環を断ち切った消費税増税の弊害である。
これ以上金融緩和は不要
15年7~9月期は、猛暑が続き天候不順といった一時的な要因がなくなってプラス成長に戻るとみられてはいる。しかし、中国の景気減速などで輸出の回復は見通しにくく、消費回復には所得環境の一段の好転が欠かせない。円安による値上げを抑えるためにも、これ以上の金融緩和は不要である。
(8月19日付社説)