経済対策、アベノミクス「加速」の意志だ
政府は消費喚起と地域活性化の方策を柱とした3兆5000億円規模の経済対策を決定した。裏付けとなる2014年度補正予算案を年明け早々に閣議決定し通常国会に提出する。
安倍晋三首相は17年4月に10%への消費税再増税を実施する方針だ。それまでに経済の好循環を確立させ、デフレ脱却を実現せねばならない。来年の統一地方選を意識した「ばらまき」懸念もないではないが、いわゆるアベノミクス「加速」への強い意志の表れと評価したい。
自治体の少子化対策支援
経済対策3・5兆円の内訳は生活者・事業者支援1・2兆円、地方活性化0・6兆円、災害復旧・復興1・7兆円である。
柱の一つである消費喚起では、2500億円規模の新しい交付金を創設し、地方自治体や商店街が発行するプレミアム商品券などへ助成する。また、今年4月の消費税増税で落ち込んでいる住宅市場の活性化へ、環境に配慮した住宅の新築や改築にポイントを付与して商品などと交換できる「住宅エコポイント」を復活させる。
地域活性化では、政府の地方創生総合戦略に沿った自治体の少子化対策などの支援に、1700億円規模の新交付金をつくった。そのほか、円安に伴う原材料価格の上昇で負担の小さくない中小企業への資金繰り支援なども特徴の一つである。こうした内容で、実質GDP(国内総生産)を0・7%程度押し上げる効果があるという。
今回の対策には、来春の統一地方選を念頭に置いた「ばらまき」との懸念もある。しかし、これまでのアベノミクスによる恩恵が地方に十分に及んでない事実を踏まえれば止むを得ない面もある。少子化に加え増税、円安の影響が小さくないということである。
アベノミクスは新年で3年目を迎えるが、現状は4月の消費税増税以降芳しくない。4~6月期、7~9月期と実質GDPは2期連続のマイナス成長。特に7~9月期は年率で前期比1・9%減に落ち込むなど回復の足取りは鈍く、景気後退も懸念される。成長の牽引役が不在なのである。
それでいて、安倍政権は10%への消費税再増税は1年半延期するものの、17年4月の実施については原則再延期はないとした。それまでの2年余に、経済の好循環を実現し、デフレ脱却を果たさなければならないわけで、アベノミクス「加速」の実を挙げることが求められているのである。
だが、一度勢いを削いだ景気を回復させるのは容易ではない。今年4月の消費税増税実施の際、経済への悪影響を考慮し、13年度補正予算で5・5兆円規模の対策が取られたが、今回と合わせて、どうにか税率3%引き上げによるデフレ効果約8兆円をカバーする勘定である。本来ならば、それだけの対策を13年度の補正に盛り込むべきだったということである。
デフレ脱却へ強い姿勢を
15年度税制改正でも、首相官邸サイドが示す成長重視の方針は心強い。消費税増税での財務省の見通しの甘さを教訓に経済再生、デフレ脱却へ強い姿勢を貫いてほしい。
(12月29日付社説)