14年の世界、具体性欠けた米のアジア政策
建国以来、米大統領は欧州を中心に世界を見据えてきた。だが、オバマ大統領は初の「太平洋大統領」だと宣言し、太平洋を挟むアジアを重視する姿勢を明らかにしてきた。
しかし、実際は米国のアジア・シフトが十分に進んでいるとは言えない。日本が中国の蛮行に対処するためにも、オバマ大統領の残り任期の2年間、より実質的な形となって表れることを強く求めたい。
掛け声倒れのオバマ氏
オバマ大統領は2009年11月、就任後初の来日の際に東京で行った演説で、米国が「太平洋国家」としてアジア太平洋地域への関与を強化していくことを強調した。
第1期政権においてオバマ大統領は、米国がイラク、アフガニスタンへの軍事介入を終結させ、アジア太平洋地域に軸足を移すという大きな方向性を打ち出した。国防予算削減の中、米国はこの地域における米軍のプレゼンスを維持し、展開部隊の規模は縮小しても、ハイテク化などにより能力強化を図る考えを示した。
アジア・ピボット(回帰)政策は、台頭する中国を意識してのものだった。しかしオバマ大統領は今年の一般教書演説で、アジア太平洋重視の方針を確認したが、具体的な内容については言及しなかった。
米国がアジアでどのような役割を果たしていくのかを明示しなかった。教書では「今年は行動の年」にしたいと述べていたにもかかわらず、掛け声倒れの1年であったと言っても過言ではない。
一方、米国防総省は6月、中国の13年の軍事力や軍事行動に関する年次報告書を発表した。報告書はとりわけ、中国人民解放軍が台湾海峡有事に加え東シナ海や南シナ海での潜在的有事に備え、軍備の近代化を進めていると指摘。東・南シナ海における軍事力と演習強化への脅威認識を示した。
現に南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で、中国は複数の浅瀬の埋め立てを加速化させている。英国の軍事専門の研究機関は今年11月末、中国が長さ3㌔の人工島で滑走路や港湾施設の整備を進めているという分析結果を明らかにした。中国としては南沙諸島で初めてとなる滑走路の建設である。中国は南シナ海のほぼ全域を領海と法律で定めている。
東シナ海でも、沖縄県・尖閣諸島の約300㌔北西にある浙江省・南麂列島では、中国軍による超高速インターネット通信網の敷設開始や最新鋭のレーダー設置、ヘリポートの整備などが確認されている。軍用機の滑走路建設計画も浮上しているという。
今や中国は西太平洋で米国の軍事力に挑戦している。台湾や南シナ海、尖閣を含む東シナ海の問題は全て、このことと関連している。
中国の横暴を許すな
オバマ政権の過去6年間、米国の世界への影響力が低下しているという全体的な印象は否めない。残り任期の2年間で明確な対中外交の基本方針を示し、積極的に対応していかなければ、中国の横暴を許してしまうことになる。
(12月30日付社説)