14年の日本、平和への脅威の中での選択


  今年の日本は、世界秩序が「法と正義」ではなく武力で国境線を変更・拡大する「ジャングルの掟」に逆戻りする横暴を目の当たりにしてきた。よそ事ではない。ロシアはウクライナ南部クリミア半島を掠め取り、南シナ海でベトナム、フィリピン相手にそれを仕掛ける中国は、日本にも沖縄・尖閣諸島周辺の領海で公船による度重なる侵入を行い緊張を高めた。小笠原諸島近辺では多数の中国のサンゴ密漁漁船が出没し、地元漁師らの生活を不安にするなど、足元の安全保障が脅かされている。

 第3次安倍内閣が発足

 こうした中、安倍晋三首相が電撃解散を行い、師走の総選挙の結果は自公与党が衆院総議席の3分の2超えの326議席を得て圧勝し、第3次安倍内閣がスタートした。本紙の今年の「国内10大ニュース」1位である。

 総選挙は4月に消費税率を5%から8%に引き上げた(4位)ために次回引き上げの延期を決めたことを含むアベノミクスの是非を争点に行われた。与党が圧勝したのは、国民が中国などの脅威に毅然(きぜん)と対応できるリーダーは首相以外にないと判断したためと見ていい。

 その主柱は日米同盟深化で抑止力をさらに強化し、より確かな安全保障体制を実現することだ。政府が7月に集団的自衛権行使を限定容認する憲法解釈変更を閣議決定(2位)した意義は極めて大きいと評価したい。

 朝日新聞がこの夏、自社の慰安婦報道で「強制連行」の裏づけとしてきた「吉田証言」を虚偽と認め、32年前からの関連記事18本を取り消した。5月に報じた福島原発事故「吉田調書」記事も誤りと認めて取り消した(3位)。第三者委員会の報告は慰安婦虚報を長年放置したことを「読者の信頼を裏切るもので、ジャーナリズムの在り方として非難されるべき」と断罪。二つの虚報・誤報の責任をとり社長は辞任したが、朝日特有の偏向報道が是正されるかは引き続き厳しいチェックが必要だ。

 8月の広島市の土砂災害で74人が死亡し、9月の御嶽山噴火では57人が死亡、6人が行方不明と戦後最悪の火山災害となるなどした(6位)。危険ドラッグの事件・事故多発(8位)とともに来年に、対策の課題を残した。STAP細胞論文に改竄など不正(9位)は残念だが、理化学研究所には9月にスタートしたiPS細胞での世界初の再生医療の成果に期待したい。

 明るい話題ではノーベル物理学賞を青色発光ダイオード(LED)開発の赤崎勇、天野浩、中村修二の各教授が受賞(5位)。ユネスコの世界文化遺産に「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県、6月)、無形文化遺産に「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」(岐阜県など、11月)が登録された(7位)。

 社会明るくしたスポーツ

 スポーツもまた世の中を明るくした。10位に「ソチ五輪で日本は金1、銀4、銅3」。フィギュアスケートで羽生結弦選手の金メダル演技、フリーで見せた浅田真央選手の記憶に残る魂の演技、葛西紀明選手の41歳銀のレジェンド・ジャンプなどは改めて喝采したい。他にテニスの錦織圭選手の大活躍も、来年に続く期待を大きく膨らませた。

(12月31日付社説)