コロナ禍の景気 回復力弱く長期停滞の懸念


 新型コロナウイルスの影響によって歴史的な落ち込みとなった前期の反動で大きな数字になったが、回復力は弱く、コロナ第3波への警戒感から伸び悩みが懸念される――。

 2020年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が示す景気の現状である。第3次補正でのテコ入れは当然だが、成長力の底上げにつながる確かな施策が必要である。

 成長率は過去最大だが

 個人消費と輸出が伸びて前期比5・0%増、年率で21・4%増という7~9月期の実質GDP成長率は、比較可能な1980年以降で最大である。しかし大方の見方の通り、これは戦後最大のマイナス成長だった前期4~6月期(年率28・8%減)の反動という側面が強い。

 もちろん、緊急事態宣言解除後に経済活動が徐々に再開したことや、政府による1人10万円の特別定額給付金や観光需要喚起策「Go To トラベル」などがあったからだが、前期の落ち込みが大きかった分、伸び率が個人消費では前期比4・7%増と大きく出たわけである。

 7~9月期でGDPを押し上げた輸出だが、これも米国や中国向けの自動車が好調で7・0%増と伸びたことがある。ただ成長率への寄与という点では、輸入の落ち込み(9・8%減)が輸出の伸び以上に大きかったことが数字を押し上げていて、決して喜べる状態ではない。輸入の落ち込みは、国内の経済活動が活発でないことの証左でもあるからである。

 それを裏付けるのが、設備投資の弱さである。設備投資は個人消費と並ぶ内需の柱であり、成長の源になるものだが、7~9月期は3・4%減と前期(4・5%減)に続くマイナス。コロナ収束の道筋が見えない中、仕方ない面もあるが、企業マインドは冷え込んでいる。日銀短観などでは、今年度の設備投資計画が調査の度に下方修正される状況である。

 21・4%という高い成長率の背後にある回復力の弱さは、実質GDPの規模で見れば如実である。コロナ禍直前の20年1~3月期は526兆円だったが、4~6月期は483兆円に落ち込み、高成長の7~9月期は507兆円に回復したが、まだ5割強の戻りである。今後も順調に回復軌道をたどれば問題ないが、国内外でコロナ感染が再拡大の様相を見せている状況では見通しは明るくない。

 今回、高成長率の一因になった輸出は、感染者の急増で欧米で再び外出制限に踏み切る動きが出ており、急回復の持続は見込みにくい。国内でも第3波到来への警戒感が強まっており、好調だった消費も雇用・所得環境の悪化もあり先行き不透明。設備投資はなおさらである。牽引役が不在となりかねない状況なのである。

 成長力の底上げ進めよ

 菅義偉政権は経済活動と感染防止の両立を目指す立場から、第3次補正予算案を編成し追加経済対策を盛り込むが、感染再拡大のリスクの中、どこまで効果を発揮できるか予断を許さない。日本経済の成長力の底上げに結び付くデジタル化推進策などを継続的に進めていくことが必要である。