関電問題、法令順守軽視の体質改善を


 関西電力幹部による金品受領問題を調査してきた第三者委員会(委員長・但木敬一元検事総長)が、福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から幹部ら75人が総額約3億6000万円相当の金品を受領したとする最終報告書を関電に提出した。

 極めて深刻な事態である。関電は癒着根絶に向け、コンプライアンス(法令順守)軽視の企業体質改善を徹底すべきだ。

「見返り」目的に金品提供

 関電が2018年に行った社内調査では、20人が総額約3億2000万円相当を受領していたことが分かったが、調査対象は限られていた。第三者委の広範な調査で関与した人数も金額も膨らんだ。

 報告書の特色は、森山氏の金品提供の目的について「見返りとして工事発注を行わせ、経済的利益を得るという仕組みを維持すること」としたことだ。

 関電の社内調査では「自己顕示欲を満足させるため」などと説明されていた。だが、第三者委は「容易には想定し難い」とこうした見方を否定。森山氏が関電との「共犯関係」をつくり出したことを浮き彫りにした。

 金品提供は1987年に森山氏が助役を退任した直後に始まり、特に東日本大震災以降拡大したという。新規制基準に対応するため、原発の工事発注が増えたためだ。幹部らのメールを復元した結果、森山氏が関電側に工事発注を強引に求めた事例が多数あり、実際に工事を発注したケースも確認された。

 森山氏が要求に応じない役員らを恫喝(どうかつ)することもあった。上場企業である関電の経営が特定の人物に振り回されていたことがうかがえる。ガバナンス(企業統治)やコンプライアンスの欠如は明らかだ。こうした状況を30年以上放置していた歴代経営陣の責任は重い。

 関電の社内調査の報告書が情報漏洩(ろうえい)の恐れがあるとして、一部の経営陣の判断で取締役会に報告されなかったことも大きな問題だ。報告書が公表されたのは提出から約1年後の19年9月で、メディアの報道を受けてのものだった。顧客や株主を軽んじていると言われても仕方があるまい。

 今回の問題を受け、経済産業省は関電に電気事業法に基づく業務改善命令を出した。再発防止に向け、社外取締役が強い権限を持つ「指名委員会等設置会社」への移行を含む体制の再構築や、金品問題の中核となった「原子力事業本部」を管理し切れなかった監査部門の強化などを命じた。

 経産省は関電の経営体制について「責任感、決断力の深刻な欠如がみられた」と指摘している。第三者委は社外からの会長登用などで企業体質の改善を求める再発防止策を提言した。関電経営陣は、こうした指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

抜本改革で信頼回復急げ

 この問題で原発行政に対する不信感も強まっている。ただでさえ原発再稼働が進んでいない中、今回の不祥事でさらに停滞しかねない。

 関電では岩根茂樹社長が辞任し、後任の森本孝新社長は「不退転の決意で、改革に邁進(まいしん)する」と述べた。抜本改革で信頼回復を急がなければならない。