20年度予算案 成長持続と強靭化で大型に


 2020年度の政府予算案が閣議決定された。一般会計総額は102兆6580億円と過去最大である。厳しい安全保障環境、少子高齢化の進行、想定を超えた自然災害の多発など諸々の危機への対処を施した予算と言える。

 最大の支出項目である社会保障費の拡大をいかに抑制するか課題は残るが、増税後の成長持続へ苦心の跡も窺(うかが)える。経済社会の活力維持へ、成長重視の視点は引き続き重要である。

前年上回る過去最大規模

 20年度予算案も前年以上に危機対処の性格が強いものになった。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の覇権的な軍事行動など安全保障環境は厳しくなるばかり。国内でも急速に進行する少子高齢化から、持続可能な社会保障制度の構築が急務になっている。加えて19年度は台風19号など想定を超えた自然災害に見舞われ、国土強靭(きょうじん)化の対応が改めて問われる事態となった。

 この意味で20年度予算案が、事業規模26兆円の経済対策を19年度補正予算案と分けて計上したことも含め、前年を上回る過去最大規模になったのは当然であり、やむを得ないと言える。

 財源となる税収は、消費税増税による増収分で過去最大の63・5兆円を見込み、新規国債発行を当初予算段階で10年連続でマイナスに抑えた。

 もっとも、これは特別会計の剰余金繰り入れや借金の返済の先送りなど異例のやり繰りを総動員しての結果でもある。ただ、それでも、歳入に占める国債依存度は引き続き3割を超え、令和初の予算案も借金頼みの構図に変わりはなく、財政状況は相変わらず厳しい。

 だからといって、税収を増やすために増税に傾斜すれば成長を妨げ、それこそ、さらなる増税への悪循環に陥る。成長重視が重要なのはこのためである。麻生太郎財務相が、一般会計総額が8年連続で最大を更新したことに「経済が伸びなければ、いろいろな目的を達成できない」と述べ、財政健全化のためにも成長を後押しする必要性を訴えたのは尤(もっと)もである。

 厳しい財政事情の中でも成長を促すため、税制改正大綱で潤沢な企業の内部留保をベンチャー投資につなげたり、次世代通信規格「5G」の普及を加速させたりする優遇措置を設けたのも評価していい。

 20年度予算案では、増税後の景気対策として「臨時・特別の措置」を19年度に続いて設け、1・8兆円を計上した。米中貿易摩擦という悪環境の中、実施した増税は台風などによる災害も重なって、生産や消費活動に著しい負の影響を及ぼし、政府は12月の月例報告で景気判断を2カ月ぶりに引き下げた。

 19年度の税収は消費税増税にもかかわらず、米中摩擦の長期化から世界経済の減速で輸出が落ち込み、法人税などが低迷して、当初予算より2・3兆円減額された。景気の減速が続けば、20年度も税収が下振れする可能性があり、景気対策で悪影響を最小限にとどめたい。

給付と負担の見直しを

 財政健全化には、税収増とともに歳出の抑制へ社会保障制度の給付と負担の見直しなど一層の取り組みが必要である。