かんぽ不正販売 企業体質の改善が急務だ


 かんぽ生命保険の不適切販売問題を検証した特別調査委員会(委員長・伊藤鉄男弁護士)の調査報告書が公表された。法令や社内規定に違反した疑いがある契約は1万2836件に上り、そのうち670件を法令・社内規定違反と認定した。

 規範意識の低さにはあきれるばかりだ。早急に組織を立て直す必要がある。

社内で黙認される風潮

 かんぽ生命の商品は、全国2万4000の郵便局を抱える日本郵便が販売してきた。郵便局への信頼が厚い高齢者を中心に狙う悪質な手口には、顧客を大切にしようとする当たり前の姿勢が全く見られない。

 不正の手口で多かったのが「二重契約」だ。新契約に加入させながら既存の契約を解約させず、契約者は保険料を二重に支払うことになった。このほか、病歴がある契約者に新保険に加入させるために解約させ、保障が受けられなくなったケースなどもある。

 報告書は、問題発生の要因として「新規契約獲得に偏った手当体系や達成困難な営業目標の設定があった」と指摘。過大な目標が不正を誘発して「社内で黙認される風潮があった」としている。

 唖然(あぜん)とさせられるのは、新規契約の獲得実績の優秀者が不適切な営業方法を広げる勉強会を行っていたことだ。これによって、実績を挙げられない社員が不適切契約に手を染めていったという。

 また、報告書は「問題を矮小化する組織風土」や現場のトラブルを把握できず、情報を共有するルールが明確でなかったことも不適切販売を助長したと強調した。こうした企業体質の改善が急務だ。

 しかし、親会社である日本郵政の長門正貢社長は経営責任について「経営陣全体で大きな責任を感じている。しかるべきタイミングで改めて発表する」と述べたのみで進退については明言しなかった。自分の置かれた立場の厳しさを分かっているのだろうか。これほどの不祥事を起こした以上、辞任は避けられまい。

 金融庁は今月27日にもかんぽ生命と日本郵便に一部業務停止命令、日本郵政には業務改善命令を出す見通し。総務省も金融庁とは別に日本郵政と日本郵便を処分する予定だ。

 金融庁の行政処分をめぐり、郵便局関係者の間では「全国一律のユニバーサルサービスを担う会社に業務停止命令は打てないはず」との見方が多かった。だが問題の深刻さを見れば、金融庁が厳しい処分に踏み切るのは当然だろう。むしろ、関係者の見方の方が常識から懸け離れていると言わざるを得ない。

 日本郵政グループは今年7月、不適切だった可能性のある契約が過去5年間で計約18万3000件(契約者数約15万6000人)に上ると公表。12月13日までに約14万8000件(同約12万8000人)の調査を終えた。調査は継続中で、特別調査委は2019年度末に追加報告書を提出する。

容易でない信頼回復

 日本郵政グループは信頼回復が容易でないことを自覚し、再発防止に努めるべきだ。