消費税増税、景気変調には機動的対応を
消費税の税率がきょうから10%に引き上げられた。前回の増税後、消費が予想以上に低迷したことを教訓に、今回はポイント還元制度など2兆円強の景気対策を準備し、税率を一部据え置く軽減税率を導入した。
ただ、ポイント還元制度などで準備が十分に整っておらず、軽減税率では消費の現場で混乱も予想される。何より世界経済の下振れリスクの中という実施時期の悪さも懸念される。景気の変調に、政府には機動的かつ万全の対応を求めたい。
米中摩擦で下振れリスク
本紙は消費税増税の実施に対し、経済への悪影響から、これまでたびたび、懸念を表明し慎重さを求めてきたが、今回、2014年4月に続く5年半ぶりの増税となった。
10%への増税は当初は15年10月に実施の予定だったが、17年4月に延期され、さらに再延期となった。消費低迷が予想以上に長引いたためで、2度の延期は当然の賢明な判断であった。
今回の増税も本来ならば、決して望ましいとは言い難い。前述した通り、世界経済は米中貿易摩擦を契機に下振れリスクの中にある。
国内景気も米中摩擦の影響を受けて輸出は低迷し、設備投資も引きずられるように伸びが鈍化している。成長率こそプラスを辛うじて維持しているが、消費にも勢いは見られない。今回の増税が景気後退の引き金にならないかと本紙が懸念するのも、景気の牽引(けんいん)役が見当たらないためである。
今回は過去の増税時にはない景気対策などが準備された。ポイント還元制度や軽減税率である。これらの導入により、民間シンクタンクの試算では増税に伴う家計負担額の合計は年間約2兆円程度で、前回増税時の約8兆円を大きく下回るという。
ただ、ポイント還元は来年6月まで。その他、「プレミアム付き商品券」や住宅ローン減税期間の延長、自動車購入時の負担軽減策なども来年中に期限を迎えるため、それぞれの対策が終了するたびに需要の下支え効果が薄れ、断続的に消費を抑制するとの懸念も指摘される。
こうした懸念は諸対策が想定通りに実施された場合のものであるが、現場の対応状況を見ると、懸念はさらに深まるばかりである。
特にポイント還元制度では開始時から対応できる店舗が約50万と、参加可能な店舗約200万の約4分の1にとどまり、想定した効果が見込める状況にない。その後、順次整ったとしても、還元対象はクレジット払いなどキャッシャレス決済のみ。現金払いは対象外である。
対策効果は見込めず
飲食料品や宅配新聞の税率を8%に据え置く軽減税率に関しても懸念はある。対象商品の線引きの分かりづらさや、飲食店では同じ商品でも店内飲食と持ち帰りで税率が異なる煩雑さである。
いずれにしても、政府が準備した対策は想定通りに奏功しない可能性が高い。経済への悪影響を抑える効果は想定ほど見込めないということである。世界経済の行方も不透明である。政府は予断を持たず、機敏な対応を心掛けるべきである。