商業捕鯨再開、海域拡大も視野に毅然と
日本の商業捕鯨が31年ぶりに再開された。日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退後、山口県の下関港から捕鯨母船「日新丸」の船団が、北海道の釧路港から日本小型捕鯨協会の5隻が出港した。日本の捕鯨文化を守り、本格的商業捕鯨に向けての第一歩が印(しる)された。
資源に影響しない捕獲枠
再開された商業捕鯨は、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内に限られる。南極海での調査捕鯨は、南極条約との関係もあって打ち切られる。
捕獲する鯨は、十分な資源量が確認されているミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラ。水産庁が発表した捕獲枠は全種類で年間383頭で、IWCの算定方式では資源量に悪影響を与えない数字という。
これは、昨年調査捕鯨で捕獲した637頭の6割にとどまる。ただ、調査捕鯨と異なり、捕獲する鯨のサイズを捕鯨業者が選ぶことができる。
現在の鯨の資源量では南極海のミンククジラが52・5万頭と推定され最も多い。その捕獲ができないのは不合理なことだが、政府としては将来的に操業海域の拡大を視野に入れ、資源状況を把握するため「目視調査」を南極海で継続する。
商業捕鯨は1982年のIWC総会で、反捕鯨国の強引な工作によって一時停止(モラトリアム)が決定された。日本の調査で資源量が回復していることが科学的に示されたにもかかわらず、反捕鯨国の働き掛けによって再開は先送りされてきた。
そういう中で、反捕鯨国との対立の解消が見込めないと判断した日本政府は、昨年12月にIWCからの脱退を決めた。
鯨資源の保護と持続的な利用を目指すはずのIWCだが、そうではなくなっているのが現状だ。オーストラリアなど反捕鯨国の論理は、鯨は知能の高い特別な哺乳類だから捕獲すること自体が悪というものだ。しかし、全ての生物は掛け替えのない種であり、鯨だけを特別視し、それを他の国にまで押し付けるのは独善以外の何物でもない。
反捕鯨を叫ぶ国々は、かつて鯨油を採るために鯨を乱獲し、他の貴重な部位を海に捨ててきた。これに対し、沿岸捕鯨の古い歴史を持つわが国は、捕獲した鯨を貴重な資源として、そのほとんどを利用してきたのである。また「鯨塚」を作って鯨を供養し、感謝の念を表してきた。
そういう歴史を持つわが国の捕鯨文化を、今後も守り発信していくためにも、商業捕鯨再開は大きな意味を持つ。
将来直面する恐れのある地球的な食料不足の対策として、鯨資源の持続的な利用は重要だ。アイスランドやノルウェーなどの捕鯨国とも連携しながら、鯨資源の持続的利用を世界に訴えていくべきだ。
その意味でも、日本がIWCの科学委員会にオブザーバーとして参加し続け、資源管理に協力を続けることは意義がある。
警戒態勢も強化せよ
商業捕鯨に対する反捕鯨国からの風当たりは強まるものと思われるが、毅然(きぜん)とした態度で進めていくべきだ。シー・シェパードのような過激な反捕鯨団体の妨害活動も予想される。警戒態勢も強化する必要がある。