水産改革法案、実効性のある資源管理を
衰退する日本の水産業を、持続可能な産業として立て直すことを目指す水産改革法案が衆議院本会議で審議入りした。
水産資源管理の強化や養殖業への企業参入促進などを柱とするもので、このような抜本的な改革は、戦後の漁業法制定(1949年)以来ほぼ70年ぶりとなる。
養殖業への企業参入促進
魚食ブームにより、世界の水産物の需要は伸びている。その中で、周辺に豊かな漁場を持つ水産大国の日本が、古い制度の足かせによって、その可能性を伸ばせないでいるのは残念なことだ。改革がその突破口となることを期待したい。
84年には1282万㌧あったわが国の漁獲量も昨年はその3分の1の430万㌧に落ち込んでいる。国連海洋法条約の批准(96年)で200カイリ時代が到来し、遠洋漁業が衰退したこともあるが、それを除いた200カイリ内の漁獲量も678万㌧を失っている。
最大の原因は、乱獲や海洋環境の悪化による水産資源の減少にある。魚たちの産卵場や稚魚の生息場である沿岸域の藻場が消失した。そういう危機的な状況にあるにもかかわらず、乱獲を抑える十分な施策が取られてこなかったのだ。
水産資源の回復には、環境の改善と漁獲の規制が最も有効である。水産庁は水産物の総漁獲量の上限を定めた漁獲可能量(TAC)制度を設けたが、対象となる魚種はサンマやスルメイカなど8種に限られている。
改革法案では、このTACの対象魚を10種以上に増やし、漁獲制限を強化する。また上限となる漁獲枠を船ごとに割り当てる、いわゆる個別割当制度を導入する。
漁獲可能量を全体で設定した場合、漁獲競争を引き起こす。そのため、効率的で市場動向も見ながらの漁ができず、経営が改善しない一因となっている。漁船ごとの個別割当になれば、過度の漁獲競争を強いられることはなくなる。
もう一つの改革の柱は、漁業権の地元漁業協同組合への優先付与を廃止し、養殖業への企業参入を促進することだ。資源が減少する中、養殖は全体の漁獲量の2割を占め、重要性を増している。企業の参入によって海域の有効利用が可能となる。より高度な経営のノウハウを持った養殖業の展開を期待したい。
漁船の大きさの制限を緩和し大型化を促進することも、経営を効率化し、世界の水産国と対抗していくために重要だ。
農林水産省は来年度概算要求で、水産関連予算としては、前年度と比べ1・7倍の3003億円を求めている。そのうちの527億円は漁業者の経営安定対策に充てられる。しかし、補助金をばらまき続けることは問題だ。あくまで抜本的な改革実行のための一時的措置とすべきであり、国会でも論議する必要がある。
予算は未来への投資に
日本の水産業が必要としているのは、実効性のある資源管理制度、豊かなビジネス感覚、そして未来の人材の育成である。水産関連予算は、何よりもこれら未来への投資につながる分野へ配分されなければならない。