マイナス成長、景気の弱さ改めて浮き彫りに


 2四半期ぶりのマイナス成長――内閣府が発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で、前期比0・3%減、年率換算では1・2%減だった。

 自然災害が相次いだせいもあるが、改めて景気の弱さを浮き彫りにした。やむを得ぬとした来秋の消費税増税だが、その後の日本経済が心配である。腰折れ阻止に万全を期してほしい。

 自然災害などの影響で

 7~9月期の日本経済は、1~3月期に続く、今年2度目のマイナス成長である。GDPの項目別に見ると、住宅投資を除き軒並みマイナスで、冴(さ)えないの一語に尽きる。

 GDP全体の約6割を占める個人消費(前期比0・1%減)は2四半期ぶり、輸出(同1・8%減)は5四半期ぶり、設備投資(同0・2%減)は8四半期ぶりのマイナス。公共投資(同1・9%減)に至っては5四半期連続である。

 マイナス成長の主因は、西日本豪雨や台風、北海道地震など自然災害が相次いだことである。野菜が値上がりし、ガソリン価格も上昇して、外食や飲食、宿泊が手控えられ消費が振るわなかった。

 輸出は、被災した自動車工場で操業が停止し、半導体関連製品の輸出拠点である関西国際空港も閉鎖となるなどして少なからぬ影響を受けた。相次ぐ自然災害は訪日外国人旅行者をも減らし、輸出に計上されるインバウンド消費も減少した。

 災害の直接の影響と同時に、消費や輸出の落ち込みに引きずられる形で、設備投資も省力化需要など底堅さはあるものの、マイナスに転じてしまった。

 茂木敏充経済財政担当相は会見で、マイナス成長は災害による一時的な影響として「景気は緩やかに回復している」との基調判断を据え置いたが、では今後は順調に回復するかどうか。

 確かに、災害による直接的な落ち込み要因がなくなれば、ある程度の好転は見込めよう。心配なのは、米中貿易摩擦の激化など日本経済を取り巻く環境条件の悪化である。

 米中貿易摩擦では日本メーカーの中国向け部品輸出が一段と弱まる可能性があるほか、アジア市場の需要自体が減少していると見る向きもある。米国経済も法人減税の効果が剥落して次第に減速局面に入っていくと予想され、世界経済は足踏みの様相が濃くなる状況にある。今回のマイナス成長は「一時的な影響」とばかりは言っていられない状況なのである。

 国内要件でも、所得の伸びに力強さが見られないため、災害などの一時的な要因に振り回される現状があるほか、来年10月には消費税率が10%に引き上げられる予定である。

 今回のマイナス成長がなくても、消費税増税の経済への悪影響軽減のために、軽減税率導入が決定し、その他の緩和措置が検討されている現状である。

 軽減税率の円滑な実施を

 環太平洋連携協定(TPP)11の年内発効は朗報だが、即効性は期待できない。

 当面は軽減税率などを混乱なく円滑に実施できるよう努めてほしい。