児童虐待、痛ましい事件をなくしたい
全国の児童相談所が2017年度に対応した児童虐待件数は、前年度比1万1203件(9・1%)増の13万3778件で、1990年度の統計開始以来、27年連続で最多を更新した。
児童虐待をめぐっては、今年3月に東京都目黒区で5歳女児が死亡した事件など深刻なケースも後を絶たず、対策強化が求められる。
連携不足で死を防げず
目黒区で虐待死した女児は十分な食事を与えられておらず、死亡時は平均体重の半分ほどの約12㌔しかなかった。住んでいたアパートから押収されたノートには「もうおねがい、ゆるして」などと書かれていた。あまりにも痛ましい事件である。
死には至らなくても、耳を疑うような事件も少なくない。埼玉県草加市では、今年1月に当時生後8カ月の長女を自宅トイレに放置し重い凍傷を負わせたとして、両親が保護責任者遺棄致傷容疑で逮捕された。
16年度に虐待で死亡した18歳未満の子供は77人に上った。前年度より7人減ったものの、放置できない事態である。保護者によって子供の命が奪われるようなことは決してあってはならない。
厚生労働省によれば、この77人のうち無理心中を除いた49人を見ると、約3割に当たる14人は市町村や児相が関与していた。それにもかかわらず、関係機関の連携不足によって事件を防げなかった。これは目黒区の事件にも当てはまる。
今年6月1日時点で、乳幼児健診を受診しないなど所在不明になっている子供が14都県に計28人いるとの厚労省の調査結果も看過できない。このうち8人は3年以上、6人は4年以上、行方がつかめていないという。所在の確認に全力を挙げる必要がある。
一方、17年度の虐待件数が増えた主な要因は、子供の目の前で親が配偶者に暴力を振るう「面前DV」の通告が警察から増えたことだ。こうした「心理的虐待」も子供の心に大きな傷を残し、人格形成にも重大な影響を与える恐れがある。
目黒の事件を受け、政府は7月に緊急総合対策を決定した。児童福祉司を22年度までに約2000人増員するなど児相の体制を強化する考えだ。これと共に関係機関の連携強化で虐待の深刻化を食い止めなければならない。
ただ、こうした対策はあくまでも対症療法だ。虐待を防止するには、家庭の重要性をいかに若い人たちに伝えていくかが長期的な課題だと言えよう。
虐待の背景には「性倫理の乱れ」があるとも考えられる。16年度に虐待死した子供77人のうち、生後1カ月未満が16人を占めている。
このうち12人は実母による加害で死亡した。妊娠を周囲に相談できず、出産後に放置するケースもある。「望まない妊娠」だったのだろう。
育児への責任教育せよ
親となる覚悟がないままに妊娠、出産した結果、虐待に走る事例が多いのではないか。
結婚や育児には大きな責任が伴うことを、きちんと教育することが、児童虐待防止につながるはずだ。