障害者水増し、雇用への関心がないのか
中央省庁の2017年6月1日時点の障害者の雇用数が、実際より3460人多く計上されていたことが分かった。
水増し分を修正すると、職員全体に占める障害者の割合は1・19%で、障害者雇用促進法で定める雇用率(2・3%)を大きく下回り、国の33機関のうち8割超の27機関で計3396人が必要数より不足していたことになる。このほかにも、国会や裁判所などで水増しがあったという。
中央省庁で不適切な算入
省庁別の不足人数を見ると、国税庁が946人と最も多く、国土交通省が659・5人、法務省が493・5人などとなっている。
国の指針では、雇用数に算入できるのは障害者手帳や医師による判定書などを所持する人と定めている。しかし、障害者手帳の有効期限が切れていても算入しているケースがあった。
さらに見過ごせないのは、本来は対象外であるにもかかわらず、健康診断で視力が悪かった人や、持病を患っている人などを数に入れている事例もあったことだ。本人が障害者として算入されていることを知らないケースも見られたという。
こうした不適切な算入は長年にわたって行われていたとみられている。厚生労働省は故意の水増しの有無について「今回の調査では分からなかった」としている。
だが、これではごまかしだと疑われても仕方がないだろう。仮に故意でなかったとしても、極めてずさんだと言わざるを得ない。
障害者雇用促進法は、1960年に「身体障害者雇用促進法」として制定され、76年に身体障害者の雇用が義務化された。98年に知的障害者、今年4月には精神障害者も雇用に努める対象として位置付けられた。
障害者雇用は民間企業にも義務付けられている。17年度の法定雇用率は公的機関よりも低い2・0%だが、従業員が100人超の企業は雇用率を達成できないと、足りない人数1人当たり原則月5万円の納付金が課される。
企業に厳しく法の順守を求めながら、手本となるべき中央省庁がこのありさまでは話にならない。
少子高齢化が進んで労働人口が減少する中、民間企業では障害者は貴重な労働力だとの意識が広がっている。障害者が働きやすい環境を整備することは、働き方改革を進める上でもメリットがあろう。
中央省庁は障害者雇用への関心がないのだろうか。今回の問題では、雇用数が水増しされた分、結果的に障害者の就労機会が奪われたことになる。このことを重く受け止めなければならない。
活躍の場を拡大せよ
政府は10月までに再発防止策と障害者の採用計画をまとめ、来年末までに不足分の解消を目指す。公的機関の法定雇用率は4月に2・3%から2・5%に引き上げられている。
1年余りで数千人規模の新規雇用を進めるのは容易ではないが、障害者の活躍の場を広げるためにも、雇用を着実に拡大しなければならない。