トランプ米政権の対中貿易制裁、強硬姿勢に評価の声
知財侵害、国際連携求める
トランプ米政権は、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に続き、米通商法301条に基づき、中国の知的財産権侵害に対抗する貿易制裁の品目を発表した。これを受け中国も報復措置を発表するなど、「貿易戦争」への懸念が強まっている。こうした中、米国内では、中国による知的財産権の侵害問題に対するトランプ政権の強硬姿勢を評価しつつ、是正に向け他国と連携して対応することを求める意見もある。
ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロギン氏は先月26日、米政権のこれらの対中制裁措置について「米国の経済安全保障を脅かす中国の不公正で不法な慣行に立ち向かう画期的な決定」だと指摘。これは「21世紀において米国が主導すべき重要な経済戦争の始まり」だとの見方を示した。
ロギン氏は、「中国企業はますます政府との結び付きを強め、中国共産党の政治的目的のために動き、政府からの補助金や保護によって莫大(ばくだい)な利益を受けている」と問題視した。
一方で、トランプ政権が、当初、安全保障を理由に、例外なく、鉄鋼・アルミへの関税措置を一方的に発表するなどしたことについては、「友好国を遠ざけることになり、非生産的だった」と指摘。米国は「この経済戦争において味方になる国が必要だ」と他国とより協力して対応する必要性を説いた。
中国による知的財産権侵害について調査した米通商代表部(USTR)が先月21日に公表した215ページの報告書では、中国が米国など外資系企業に現地会社との合弁会社設立を義務付けるなどの規制を通じた技術移転の強要や米企業買収のための公的資金拠出、米企業を標的としたサイバー攻撃などが行われていると指摘。中国が国家目標を達成するために、組織的に外国の技術を盗んでいると批判している。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で中国問題を研究するスコット・ケネディ氏は最近発表した論文で、USTRの報告書について、「中国が外国の技術を是が非でも得るために何百もの規制や政策を用いていることを詳述している」と評価した。
ただ、その一方でトランプ氏が中国に対米貿易黒字を削減するよう繰り返し求めていることから、中国が知的財産権を侵害する慣行を一切改善しないまま、「中国が米国から大豆、シェールガス、ボーイング社の航空機を追加で購入する」ことなどで米中が折り合う可能性があると懸念を示した。
ケネディ氏はまた、米国が鉄鋼・アルミへの輸入制限で、同盟国などに対して高飛車な振る舞いをするようなことをしなければ、「輸出規制の拡大や投資審査の厳格化などで協調できる可能性は高まっただろう」と指摘。米国と同様に中国の知的財産権侵害の問題などに悩まされる他国とより連携を取りながら対応していくことを求めた。
今月中旬に予定されている日米首脳会談では、北朝鮮の核・ミサイル問題に加え、米国の鉄鋼・アルミニウムなどの輸入制限も議題に上るとみられるが、日米が対中政策面でいかに協調関係を築いていけるかも課題になる。
(ワシントン山崎洋介)