米セクハラ問題、性の乱れを反省し健全社会に


 米タイム誌が表紙の「今年最も世界に影響を与えた人」に、セクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)を告発した女性を「沈黙を破った人たち」として選んだ。米国ではソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通して被害を公にする動きが広がり、疑惑の浮上した有名人が職を追われた。政界をも直撃している。

 わが国にも同様な問題がある。対岸の火事とせず、性の乱れを助長した社会的風潮を反省し、健全性を取り戻すきっかけとしたい。

SNS上で投稿急増

 SNS上でセクハラ被害の投稿が急増したのは10月中旬からで、歴史的と評される勢いで社会現象となった。1カ月半余りで「今年の人」になるほど、弱い立場の人が被害者となる「公然の秘密」は蔓延(まんえん)していたのだ。

 SNSのツイッターに女優のアリッサ・ミラノさんが、セクハラ被害を受けた女性に「私も(MeToo)」と投稿することを呼び掛け、ユーザーがツイッターで興味ある話題を閲覧しやすくするための目印であるハッシュタグ(♯)を付けて書き込む提案をしたのは10月15日だ。

 これは、ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏が過去30年もの間、女優たちにセクハラ行為を繰り返していたことが米メディアによって明るみになり、映画芸術科学アカデミーから追放された翌日だ。このゴシップをめぐる女優や俳優らのSNS上の論争がきっかけだったという。

 一般人の関心は一挙に高まった。投稿は女性ばかりでなく男性からも寄せられた。無論、書き込みは一方的であり信憑(しんぴょう)性の問題もあろう。が、米メディアによる告発で著名人が疑惑を認めるケースが相次いだ。テレビ番組の有名な司会者や解説者、この問題を告発している米紙ニューヨーク・タイムズの記者ら報道関係者も例外ではない。

 また、来年の中間選挙を控える中、政界にも波及している。上院補欠選挙が12日にアラバマ州で行われるのを前に、共和党のムーア候補に38年前のセクハラ疑惑が浮上。同州は共和党の牙城でありながら接戦になっている。

 ムーア氏が疑惑を否定し、上院で多数を占める共和党との議席差がわずかであることから、民主党は一歩先に所属議員のセクハラ疑惑に対してけじめをつけるアピールをした。コンヤーズ下院議員、フランケン上院議員は、当初は院内の役職の辞任や謝罪で済ませようとしたが、同党は両氏に議員辞職を表明させた。このため、共和党でもフランクス下院議員が辞職表明するなどの動きが出てきた。

健全な結婚で防止を

 だが、政争の具にすることはセクハラ自体の解決にはならない。米国の性に関する自由な考え方が世界に影響してきた。行き過ぎは明らかだ。被害者のメンタルケアとともに、加害者が性嗜好障害の場合は治療を促す必要があろう。

 それ以上に、性の乱れを回避する倫理観を持ち、健全な結婚によって強い絆で結ばれた家庭を築くことが防止につながる。人類共通の悩みとして問題を克服したい。