ケリー米大統領首席補佐官、トランプ政権立て直しへ
軍隊式規律で組織改革
ケリー米大統領首席補佐官がトランプ政権の立て直しを図っている。軍隊式の規律をホワイトハウスに持ち込み、これまでバラバラだった指揮系統を一元化。政府高官の解任・辞任が相次ぐなど混乱していたトランプ政権内で影響力を拡大しつつあり、このままケリー氏がホワイトハウスを統制できるか、手腕が注目されている。(ワシントン・岩城喜之)
「ツイッター」もチェック
トランプ政権は発足直後から混乱や内紛が続いていた。トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問を中心とするグループとバノン首席戦略官・上級顧問のグループのほか、共和党主流派などがバラバラに行動し、報告体制も統一されていなかった。
さらに先月21日にスカラムチ氏が広報部長としてホワイトハウス入りすると、大統領報道官だったスパイサー氏が辞任。次いで大統領首席補佐官のプリーバス氏も解任され、政権内の混乱に拍車が掛かっていた。
こうした中、元海兵隊大将のケリー氏は軍隊式の規律をホワイトハウスに取り入れ、混乱の収拾を図っている。
ケリー氏はまず、混乱の大きな原因となったスカラムチ氏を解任。その後も問題が多いと考えた国家安全保障会議(NSC)の職員2人を辞めさせた。
またホワイトハウスの組織体制を改革し、指揮系統を一元化。これによりホワイトハウスの全職員はケリー氏に報告や情報を上げることになり、トランプ氏との面会もケリー氏の許可が必要となった。
レーガン大統領の首席補佐官を務めたケネス・デューバースタイン氏は、国務省や国防総省のほか議会もケリー氏の首席補佐官就任を支持しているとし、「まさにトランプ政権が必要としていた人物だ」と評価。また、共和党の中でもトランプ氏に批判的な姿勢のスーザン・コリンズ上院議員もNBCテレビの番組で「ケリー氏は政権に一定の秩序と規律をもたらすだろう」と語った。
一方、ケリー氏はトランプ氏のツイッター発信が混乱の一因だとの考えを示している。トランプ氏は関係省庁に事前の調整もなく、突然ツイッターで重要な政策を発表することがあり、こうしたことがないようケリー氏はトランプ氏にツイッターの使用方法を改めるよう求めた。
ブルームバーグ通信によると、トランプ氏はケリー氏の提案を一部受け入れ、問題になりそうな場合はツイッターへ投稿する前にケリー氏と相談し、違う表現に変える意向を示したという。
こうしたケリー氏の「ホワイトハウス内の文化を変える取り組み」(米メディア)がどこまで続くかは未知数だ。前任者のプリーバス氏は政権内でほとんど権限を与えられなかったことから、ケリー氏もいずれ同じような状況に陥るだろうとの見方もある。
ただ、トランプ氏はマティス国防長官やマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)など軍出身者の意見を重視する傾向があることは見逃せない。ケリー氏に対しても今のところ幅広い権限を与えており、ホワイトハウスが軍隊式規律の下、秩序を取り戻す可能性は十分にある。