米韓首脳会談、文氏は北に厳しい姿勢示せ
トランプ米大統領と文在寅・韓国大統領が米国で会談し、会談後の共同声明では、北朝鮮の脅威に対する抑止と防衛を強化するため、日米韓3カ国の協力が重要だと確認。今月ドイツで開催される20か国・地域(G20)首脳会議に合わせ、日米韓首脳会談を行うと発表した。
立場の違いも見られる
トランプ氏は会談後、「米韓の同盟は、地域の平和と安全保障の礎石だ」と表明。北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を続ける中、米韓が緊密に連携していく決意を再確認した。
文氏にとって、今回の訪米は5月の大統領就任後初めての外国訪問となった。韓国では昨年後半以降、朴槿恵前大統領弾劾に至る政治的混乱が続いたこともあり、米韓の首脳レベルでの直接会談は途絶えていた。それだけに今回の首脳会談は、双方での新政権発足を受け、信頼関係構築に本格的に着手する弾みとなったと言える。
だが、両首脳には立場の違いも見られた。トランプ氏は、北朝鮮による核・弾道ミサイル計画には「断固とした対応が必要だ」と主張。「戦略的忍耐の時代は失敗だった。忍耐は終わった」と述べ、強い姿勢で臨む考えを示した。
一方、文氏は「段階的・包括的アプローチの中で、制裁と対話の両方を駆使する」と対話の必要性にも言及した。こうした違いが今後の米韓連携に影響しないか懸念される。
文氏は大統領就任前から北朝鮮に融和的だった。先月行った演説では、金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談に臨む用意があることを改めて表明。来年の平昌冬季五輪をめぐっては、南北合同チームの結成を提案している。
しかし、これでは北朝鮮を増長させ、米国との関係に亀裂が生じかねない。日米韓3カ国が足並みをそろえることも難しくなるだろう。文氏が核・ミサイル開発を「韓米にとって最大の挑戦」と言うのであれば、北朝鮮に対して厳しい姿勢を示すべきだ。
会談後の共同記者発表では、両国間の重要懸案だった米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に関する言及はなかった。THAADについては、早期の完全配備を求める米国に対し、韓国はまず環境影響評価が必要だとしている。
配備には中国が強く反発し、THAADのための用地を提供した韓国企業ロッテの商業施設を営業停止する報復行為に出るなど揺さぶりを掛けている。文氏自身も大統領選で配備に慎重な姿勢を示していた。
だが、北朝鮮のミサイルに対処する上でTHAAD配備は欠かせない。米下院指導部との会談で、文氏は配備を覆す考えはないと表明したが、積極的に推進して米国の不信感を払拭(ふっしょく)すべきだ。
日米韓は連携強化を
文氏はトランプ氏に年内の韓国訪問を招請し、トランプ氏も受け入れた。米韓首脳が関係を深めることは、北朝鮮に対処する上で日本にとってもプラスとなる。地域の安定に向け、米韓そして日米韓が連携を強化する必要がある。