現有確保に躍起の共産


’17首都決戦(下)

 告示後初の週末を迎えた24日、東武東上線ときわ台駅北口で行われた共産党都議選候補の演説会。駅前のロータリーを埋めた聴衆は、「憲法9条 まもろう」というのぼりを立てたり、「共謀罪NO!」のプラカードや「辺野古新基地建設反対」などと書き込まれた提灯を掲げながら、委員長の志位和夫を迎えた。

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街頭演説を聞く有権者ら=23日、JR新宿駅西口

 マイクを握った志位は、冒頭、「今回の選挙戦の対決の構図は自民、公明対共産党だ」と強調。その後、森友・加計学園問題にはじまり、「共謀罪(テロ等準備罪)」法案の「強行」採決や安倍晋三首相の9条改憲発言などを取り上げ、立て続けに「安倍自公政権」批判を展開した。

 4年前の前回、旧民主党は議席数が43から15に激減し、都議会第4党に転落。これに対し、政権批判票を吸収して8から17議席に倍増し、自民、公明に続く第3党に浮上したのが共産だった。

 現有議席の「絶対確保」と上積みを目指す今回は、公明が自民と袂(たもと)を分かつことで前回とは対決構図が一変しているが、共産はあくまで国政における対立軸を前面に打ち出し、政権批判票の取り込みを狙う。

 築地市場の豊洲移転問題では、小池百合子知事が示した方針について、築地に市場機能を残す方針は評価しつつ、豊洲移転では「築地ブランドは守れない」と再検討を求める。都民ファーストとの対立を避けながら、自公に対しては「歴代知事と共に豊洲移転を推進した」として批判の矛先を向けている。

 志位は、前回都議選の躍進が「その後の参院選挙、総選挙での連続躍進につながり、野党と市民の共闘につながった」とする。この都議選でも結果を残すことで、次期総選挙に向け改めてその存在を示したいところだろう。

 前回は全42区で候補者を擁立したが、今回は、36区(37人)にとどまった。民進候補が出馬する武蔵野市(定数1)で候補者の擁立を見送るなど、他党との協力姿勢を示した。

 前回、共産が2人区で唯一議席を獲得した文京区。24日夕、同区のスーパー「ダイエー小石川店」前で行われた共産候補の街頭演説には、民進東京2区総支部長の松尾明弘や宮崎文雄同区議も駆け付けた。店を出入りする買い物客を前に、小池晃書記局長は、公認候補を「野党と市民の共同の候補だ」と強調。その日、安倍首相が年内に自民党改憲案を憲法審査会に提出する方針を示したことに対して、「今度の都議選で出鼻をくじこうではないか」と息巻いた。

 一方、公明とは、狛江市の「防犯カメラ」を巡って批判の応酬があった。

 定数が2から3に増えた北多摩3区(調布市、狛江市)。自民と都民ファーストの現職2人に加え、世田谷区から鞍(くら)替えした公明現職と共産新人で争う。

 24日、同市長を4期16年務めた同党の矢野裕前市長が、共産候補の応援のため小田急線狛江駅北口に駆け付けた。公明が矢野市政下で防犯カメラが設置されなかったと批判していることに対し、矢野は「防犯カメラは犯罪を未然に防ぐ道具ではない」とし、ボランティアによるパトロールで市内の犯罪を減らしたと訴えた。

 その翌日に同駅で応援演説した公明の佐々木貴史同市議は、18日のNHK日曜討論で小池晃が矢野市政下で防犯カメラが「91箇所設置されている」と発言したことについて、「これは公共施設内の監視カメラのこと。公道上に防犯カメラは付けていない」と指摘。さらに「こういったうそを言う政党の候補者に都政を任せるわけにはいかない」と語気を強めた。

 公明は、公式ツイッターでも、「共産党の実態『3つのK』」として、「汚い!実績横取りのハイエナ政党」「危険!オウムと同じ公安の調査対象」「北朝鮮!『危険ない』と的外れな発言」と指摘(21日)。

こうした共産批判に対し、志位をはじめとした共産幹部は、「公明党こそ都政の闇を作ってきた張本人だ」などと街頭で繰り返し訴え、“反撃”に躍起になっている。(敬称略)

(都議選取材班)

(終わり)