首都決戦、第1党は自民か都民か
中盤戦に突入した東京都議会選挙は国政もにらみつつ、小池百合子知事率いる都民ファーストと自民が第1党をめぐり火花を散らし、公明、民進、共産などの各党も総力戦を繰り広げている。
(都議選取材班)
「古い議会を新しくする絶好のチャンスが今日から始まった」。
小池知事の第一声は若者が多い渋谷センター街横。組織のしっかりした自民、公明、共産のように組織動員は多くなく、頼みの無党派層に「ボスの政治、忖度政治が横行」する古い議会との決別を訴えた。9分弱の演説だったがその中で2回、選挙協力する公明に言及。同党が私立高校の実質無償化と議員報酬の2割削減をリードしてくれたと持ち上げ、陰に陽に繰り返した自民批判と対照をなした。
昨年7月末の都知事選で291万票を集め自民と野党4党の推薦候補に圧勝。その「小池旋風」を背景に「希望の塾」を立ち上げ、都議会を都民ファーストを軸とした支持勢力で固める準備をしてきた。その成果が問われるのが今回の選挙だが、中央政界の関心は「その先」に集まっている。
第一声で両脇を固めたのがそれぞれ民進と自民を離党した長島昭久、若狭勝の両衆院議員。また、公示前日には、小池氏を支える旧みんなの党出身都議を応援する意向を示した渡辺喜美氏(参院議員)が日本維新の会から除名された。渡辺氏は同党の都議選決起大会で、選挙後は東京と維新が基盤を持つ大阪との「改革大連合」を提唱するなど「親小池」を明確にしている。都民ファーストが都議選で「圧勝」すれば、次期衆院選をにらんだ国政版「小池新党」の立ち上げは夢でなくなる。
都議会(定数127議席)の過半数は64議席。立候補23人全員当選をめざす公明(現有22)などと過半数を確保するためには立候補50人中41人以上の当選が必要だが、議会の主導権を握るためには自民の後塵を拝するわけにはいかない。60人が立候補した自民(同57)も公明と袂を分かったこともあり目減りは覚悟のうちだが、第1党までは明け渡せない。都民ファーストにとっても譲れない一線だが、頼みの綱の「小池人気」に陰りが見えてきた。築地市場の豊洲移転問題の解決遅延をついた自民の「決められない知事」攻撃が功を奏した形だが、小池氏は日程も予算の裏付けもない玉虫色の観測気球を揚げて挽回を図る賭けに出た。小池都政は早くも正念場を迎えた。
一方の自民。森友・加計学園問題などへの「拙い対応」によって安倍晋三内閣の支持率が急落する中、都議会でも自民が第1党の座を失なえばダメージは大きい。首相の次期衆院選構想や憲法改正に向けた政治日程にも影響が及びかねない。党本部も乗り出し徹底した組織選挙で巻き返しを図るが、安倍首相の支援は控えめで、告示から4日目に初めて屋内で約15分間スピーチするにとどまっている。
民進も現職都議や立候補予定者が次々と小池氏の下に流れ、国会での政府追及も支持率の上昇につながらず、八方ふさがりの状態が続く。惨敗した前回の当選者数(15)の半分以下の現有勢力(7)すら維持できなければ、東京が地盤の蓮舫代表の責任問題となるだけでなく、党の存立意義まで問われよう。
国政では自民と連立し、都政では小池支持の公明はジレンマを抱えた戦いだ。自民を徹底批判する都民ファーストに同調するわけにもいかず、かといって“悪役”を立てない戦いはやりにくい。今は共産批判を強めている。都民ファーストとともに過半数を目指すものの、都民ファーストが圧勝して国政に向かうとジレンマが拡大するので、自・都ともに大勝してほしくないのが本音だ。公明の標的とされた共産は、都議選は「自民・公明と共産党の戦い」だと訴え、都民ファーストとの正面対決は避けながら現有17議席の上積みを目指している。