トランプ大統領、米保守運動の「新たな顔」に
米ワシントン近郊で開かれた保守派の年次集会「保守政治行動会議(CPAC)」で演説したトランプ米大統領は、全米から集まった活動家の熱狂的な歓迎を受けた。かつてはリベラル寄りだったトランプ氏を批判する主張が相次いだ昨年の集会とは様変わりし、トランプ氏が保守主義運動の「新たな顔」となったことを強く印象付けた。(ワシントン・早川俊行)
年次集会、批判から熱烈歓迎に一変
22日から25日まで4日間開催された今年のCPACは、共和党大統領候補指名争いの最中に開かれた昨年とはまるで別世界だった。
昨年はトランプ氏の指名獲得を何としても阻止したい保守派による「反トランプ集会」の様相を呈し、トランプ氏も土壇場で出席をキャンセルせざるを得なかったほどだ。ところが、今年は多くの参加者が「米国を再び偉大にする」というトランプ氏のスローガンが書かれた赤い帽子をかぶるなど、熱烈なトランプ支持者の集会に一変した。
トランプ氏が保守派から毛嫌いされる立場から英雄扱いされるようになったのはなぜか。まず何より、大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン元国務長官を倒したことが大きい。クリントン氏が当選していれば、オバマ前大統領のリベラル路線は間違いなく継承されており、これを阻止したことはトランプ氏の否定できない功績だ。
また、トランプ氏が大統領選で掲げた保守的な公約を着実に実行する「有言実行」の姿勢が、保守派の評価を劇的に高めている。特に、米社会に絶大な影響を与える連邦最高裁判事に公約通り保守派を起用したことを、CPAC主催団体「米国保守同盟」のマット・シュラップ会長は「満塁ホームランだ」と絶賛する。
昨年のCPACでは、一部参加者の間でトランプ氏が登壇したら一斉に退場する計画があった。これを主導したジョージア州の牧師ウィリアム・テンプル氏(66)もトランプ支持者に転じた一人だ。テンプル氏は本紙の取材に「(メキシコ国境沿いの)壁建設や不法移民排除、米軍増強などトランプ氏が(CPACの演説で)語ったすべてことは、私が待ち望んでいたものだ」と、興奮気味に語った。
CPAC参加者の熱烈な歓迎が象徴するように、トランプ氏が保守主義運動の新たな顔として台頭したことは確かだが、ナショナリズム、ポピュリズムの色彩が強い同氏の「米国第一主義」は、決して保守派の伝統的な主流思想ではない。このため、米メディアでは、伝統的保守派とトランプ氏の登場で勢いづく大衆迎合的保守派の間で分裂が生じているとの指摘が多く見られる。
これに対し、ワシントン・タイムズ紙のコラムニスト、メーセデス・シュラップ氏は「主要メディアが報じるよりも保守運動は結束している」と反論。「保守派はこの時の重要性を理解している」とし、保守的な政策課題を前進させる千載一遇の機会を逃さないため、保守派はトランプ氏の下で結束し続けるとの見通しを示した。