過激化する「反トランプ」デモ


多数の無政府主義者が扇動

 全米に広がる「反トランプ」デモの一部が過激化している。無政府主義を掲げる過激派や左翼活動家がデモに入り込み、扇動していることも明らかになってきた。大統領就任式に合わせて首都ワシントンで行われた「反トランプ」デモの逮捕者にはアナキスト(無政府主義者)が多数含まれており、過激派の影響を受けて暴力的になるデモに批判が強まっている。(ワシントン・岩城喜之)

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暴動が起きたカリフォルニア大バークリー校のデモで「これは戦争だ」と書かれた横断幕を掲げる人たち(ユーチューブの動画より)

 米西部カリフォルニア州にあるカリフォルニア大バークリー校で1日夜、「反トランプ」デモが暴徒化し、キャンパスが閉鎖された。この日はトランプ氏を支持する保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の編集幹部マイロ・ヤノポロス氏が同校で講演を行う予定だったが、これも中止に追い込まれた。

 デモの中で特に過激だったのが黒色の服やマスクで全身を覆った集団で、キャンパス内の建物に放火し、多くの窓ガラスを割るなど暴動になった。

 こうした格好の集団による抗議活動は「ブラック・ブロック」と呼ばれ、無政府主義者などが行うことが多い。米メディアによると、バークリー校の暴動も無政府主義者とみられる集団が引き起こしたもので、キャンパス内の至る所に「トランプを殺す」と書き込み、暴力行為を繰り返した。

 「反トランプ」を掲げる同校の学生団体幹部は「暴動は予想外だった」としながらも、「(ヤノポロス氏の)講演が中止されたのは満足だ」と強調。過激派が暴力で講演会を中止に追い込んだことを評価した。

 これに対し、同校の広報担当者ダン・モグロフ氏は「(暴動は)前例のない侵略だった」と非難。「米国公民権連合」のロバート・ナイト上級研究員はワシントン・タイムズ紙への寄稿で、「バークリー校の暴動は全米で起きている反トランプ暴動の縮図だった」と指摘し、暴力で反対意見を封じ込める手法を批判した。

 一方、先月20日の大統領就任式に合わせてワシントン市内で行われたデモでは、無政府主義者を多数含む200人以上が逮捕された。

 逮捕者の一人は米メディアに対し、過激なデモを行った理由について「就任式のテレビ中継を少しでも邪魔したかった」と主張。世界中に「反トランプ」デモが大きく報道されたことから「目的は達成された」と語った。

 こうした過激なデモは左翼活動家や無政府主義者が行うことが多いが、ワシントン・ポスト紙は、過激派の影響を受けて一般のデモ参加者も暴力的になっていると指摘する。

 コネティカット州では「反トランプ」デモが高速道路を占拠したため、重症患者を乗せた救急車両の通行が妨げられる問題も起きた。

 FOXニュースは、活動家に扇動されたデモを「低俗だ」と厳しく批判し、暴力を排除するよう求めている。ただ、「反トランプ」デモは収まる気配がなく、より過激化する危険性も指摘されている。