「民主主義の維持に結束を」 オバマ米大統領、最後の演説
トランプ氏への牽制も
20日に2期8年の任期を終えて退任するオバマ米大統領は10日夜、地元イリノイ州シカゴのコンベンションセンターで最後の演説を行った。オバマ氏は医療保険制度改革(オバマケア)の実現や失業率を改善させた実績を強調。一方、名指しはしなかったものの、トランプ次期大統領が移民の受け入れや地球温暖化対策に消極的な姿勢を示していることに懸念を表明した。
オバマ氏は国民に対して「私をより優れた大統領にしてくれた」と謝意を表明。さらに「民主主義の維持には、相違を超えて結束することが重要だ」と強調し、昨年の大統領選などで深まった米国の分断を修復するよう呼び掛けた。ただ、自身がリベラルな政策を推し進めたことが保守派との対立や分断の大きな原因になったことについては、最後まで触れなかった。
またオバマ氏はトランプ次期政権への円滑な移行を約束。「世界は米国の民主主義を特徴づける要素の一つを目の当たりにすることになる」と強調した。一方で、「私はイスラム系米国人への差別を拒否した」と述べ、不法移民の強制退去やイスラム教徒に対する過激な言動を繰り返すトランプ氏を念頭に批判を展開。さらに「気候変動問題を否定することは、次世代への裏切りだ」と述べ、地球温暖化に懐疑的なトランプ氏に懸念を示した。
オバマ氏は演説の多くで8年間の実績をアピール。トランプ氏がオバマケアやイラン核合意などの見直しに言及していることから、自身の「レガシー」(遺産)がトランプ政権で覆されることを牽制したといえる。
「お別れ演説」はホワイトハウスで行うのが慣例だが、オバマ氏は弁護士活動や市民運動を始めたシカゴを選んだ。大統領の地元で行われるのは初めてで、ミシェル・オバマ大統領夫人やバイデン副大統領夫妻も同席した。
(ワシントン岩城喜之)