潜水機奪取「前代未聞の行為」 トランプ氏、中国を強く批判
中国海軍艦船が南シナ海の公海で米海軍の無人潜水機を奪った問題について、トランプ次期米大統領は17日朝、ツイッターで「中国が公海上で米海軍の調査用無人潜水機を盗んだ。前代未聞の行為だ」と強く批判した。トランプ氏は同日夜にもツイッターに「中国が盗んでから返す無人潜水機は要らないと言うべきだ」と書き込み、中国に対して強い態度で臨むよう米政府に求めた。
返還では両政府合意
一方、米国防総省のクック報道官は17日、「南シナ海での中国による米無人潜水機の違法な奪取に対して正式に抗議した。中国当局と直接的なやりとりをした結果、中国が返還に同意した」と発表した。返還の時期や方法については明らかにしていない。
中国側は「正体不明の装置を発見し、船舶に危害が及ぶのを防ぐため識別調査を行った」と主張。米軍が中国近海で「偵察や軍事的測量」を続けることに「断固たる反対」を表明した。
ただ、米政府は「中国との軍事的な緊張が高まることを避けたがっている」(ワシントン・ポスト紙)ものの、潜水機は海水温や塩分濃度などの情報を収集していただけとしており、南シナ海での調査は続けていく構えを見せている。
トランプ氏と中国との関係をめぐっては、12月に入ってから緊張が高まっている。同氏は2日に台湾の蔡英文総統と電話会談。さらに中国の為替操作や南シナ海で進める軍事施設の建設を強く批判し、対中強硬姿勢を鮮明にしている。中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」原則についても縛られる必要がないとの見方を示している。
これに対して中国は核兵器の搭載可能なH6爆撃機を南シナ海上空に派遣したり、米自動車メーカーに独占禁止法違反で制裁措置を科す方針をちらつかせるなど、挑発や牽制(けんせい)を続けている。
米メディアは一連のやりとりについて「トランプ次期政権と中国が緊張した関係になる前兆かもしれない」とし、今後の動きを注視していく必要があるとしている。
(ワシントン岩城喜之)