赤地に白色の新月と星のトルコ国旗。イスタン…
赤地に白色の新月と星のトルコ国旗。イスタンブールの町中では公共施設に限らず、商店、民家の軒端によく見られる。南部の沿岸地域に行けば、漁船やレジャーボートのロープに国旗がくくり付けられ風になびいている。
トルコの国民はとても国旗を愛する愛国の民だ。もう一つ、市中でよく見掛けるのは歴史的記念碑で、特に近代トルコ建国の父ケマル・アタチュルクに関するモニュメントが多い。南部の港町アンタルヤでは、その像と「海運業で国を興す」との自筆の銘板も見た。
トルコの今回のクーデター未遂。愛国の思いを常に前面に出す国民気質、それに近代化以降の歴史的経緯がその素地としてあるのは間違いない。
直接的には、エルドアン大統領がアタチュルクの世俗主義を廃し、イスラム根本主義に傾く姿勢に、軍の一部が公然と反旗を翻したものとみられる。軍や憲法裁判所は長年、世俗派の「牙城」と見なされてきた。
死者290人以上の大きな犠牲を出したが、反乱はすぐ鎮圧された。その後のエルドアン大統領の対応に余裕すらうかがえるのは、これを国内対立を解消する契機、自浄作用の一環と見なしているからかもしれない。
「雨降って地固まる」ということになればそれに越したことはない。テロが頻発し欧州連合(EU)やロシアなどとの対外関係でも厳しい局面に向かうトルコだが、国民が一体化し、この苦境を乗り切ってほしいと願うばかりだ。