東京都知事選、「首都の顔」に求められる責任


 東京都知事選が告示され、都内各地で候補者による第一声が上げられた。各候補は、都政の透明化や2020年五輪・パラリンピックの開催費抑制などを強調するが、都知事として取り組むべき仕事は幅広い分野にわたり、多方面への目配りも欠かせない。

 有権者は、より多角的な観点から「首都の顔」にふさわしい人物を見極めることが必要だ。

 五輪や防災、少子化対策

 都知事選出馬をめぐるドタバタ劇が連日メディアを賑(にぎ)わしたが、告示日直前になってようやく候補者が定まった。事実上、自公などが推薦する前岩手県知事の増田寛也氏、野党4党の統一候補となったジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元防衛相の小池百合子氏が争う三つどもえの構図となった。首都直下型地震に備えた防災対策、待機児童問題などの社会福祉政策、五輪・パラリンピックの開催費などを主なテーマとして、論戦が繰り広げられている。

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東京都知事選が告示され、第一声を上げる(写真左から)小池百合子元防衛相(14日午前、東京・JR池袋駅前)、増田寛也元総務相(14日午前、東京・隼町)、鳥越俊太郎氏(14日午前、東京・JR新宿駅前)

 中でも、少子化問題は深刻な状況だ。人口動態統計(15年)によると、東京都の出生率は、1・17と全国でワースト1位。全国から若者が集う首都の出生率低迷は、日本の将来をも左右しかねない。

 待機児童問題の解消を急ぐとともに、結婚・子育てしやすい社会環境をいかに築くか、知恵を絞る必要がある。

 また、都民の「安心・安全」を守る防災への取り組みも欠かせない。最新の被害想定では、首都直下の発生確率は、30年以内で70%、最悪の場合、死者は2万3000人、家屋倒壊は60万棟に上る。

 大災害時に日本の心臓でもある首都の機能が麻痺(まひ)することがあってはならない。建物の耐震化を促進するなどの防災、減災対策が急務だ。

 知名度争いやメディアを使った「空中戦」に傾きがちな都知事選だが、候補者には、こうした難題にしっかり向き合い、解決する覚悟や責任が問われる。

 一方、森記念財団都市戦略研究所の「世界都市総合力ランキング」(15年)では、東京は、ロンドン、ニューヨーク、パリに続いて4位となっている。膨らむ開催費に注目が集まる五輪だが、むしろ、五輪を起爆剤として世界中の人々や資本を惹(ひ)き付ける魅力ある都市をつくり上げる創造性を発揮できる知事が望ましい。約1300万人の人口を抱え、約13兆円の予算規模を誇る東京都が牽引(けんいん)役となって、国全体を活性化させることも可能だ。

 海外都市との交流をめぐっては、舛添要一前知事の高額な出張費が批判の的になったものの、今後も推進すべきだ。経費の使い道を見直すことは当然だが、4年後に五輪を控えている中、むしろ海外に向け東京の魅力を発信する絶好の機会と捉えるべきだろう。

 人格見極めて判断を

 東京都が果たす役割は、一自治体の領域にとどまらず、国全体へ及ぼす影響も小さくない。1000万人を超える都の有権者は、各候補の政策とともに、その責務を担うにふさわしい人格を備えているかをしっかりと見極め、責任ある判断を下すことが求められる。