沖縄米軍属逮捕、オバマ氏に再発防止策求めよ


 沖縄県うるま市の女性会社員が無残な遺体で発見され、米軍属の男が死体遺棄の疑いで逮捕された。被害者は、まだ20歳の若さだった。言語道断の凶悪犯罪である。

安倍首相が「強い憤り」

 女性は先月末から行方不明となっており、沖縄県警は男の供述に基づいて遺体を発見した。男は「乱暴する相手を車で2~3時間捜していた」と述べているという。後ろから棒で殴った後、乱暴したと説明して「首を絞めた」「ナイフで刺した」などと殺害をほのめかす供述もしている。

 安倍晋三首相は、沖縄県の翁長雄志知事との会談で「非常に強い憤りを覚える」と述べるとともに、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)出席のためにオバマ米大統領が来日する機会をとらえ、再発防止策を求めていくことを約束した。当然のことである。

 今回の事件は、日米友好関係のためにあってはならないものだ。政府は米国に強く抗議するとともに、この種の事件が両国関係に壊滅的打撃を与えかねないことを訴えるべきだ。

 米軍関係者による凶悪事件は今回に限らない。2012年10月に海軍兵士2人が集団強姦致傷容疑で、今年3月にも海軍兵士1人が準強姦容疑で逮捕されている。事件のたびに米軍当局は綱紀粛正を約束しているが、その約束はどうなっているのか。安倍首相は日本国民の失望と怒りを率直にオバマ大統領にぶつけるべきである。

 事件発生の要因として、全国の米軍専用施設の75%近くが沖縄に集中していることが挙げられている。確かに、これが米軍関係者の犯罪の温床になっていることは否定できない。

 しかし、わが国の安全保障における在沖縄米軍基地の戦略的重要性を忘れるべきではない。中国の海洋進出や北朝鮮の核開発などから、その重要性は高まっている。

 米軍関係者による事件再発阻止のために沖縄の米軍基地を減らすべきだとの議論もある。だが、大局を見る目を失ってはならない。その地政学的位置から、在沖縄米軍が北東アジアの抑止力の要となっている事実を再確認することが求められる。

 ただ、その米軍によって平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされるようでは、何のための日米安全保障条約か――ということになるだろう。この点を安倍首相はオバマ大統領に強く訴え、事態の深刻さを認識させるべきである。

 沖縄県民の怒りは頂点に達している。男が勤務する嘉手納基地のゲート前では、市民らが「全基地撤去」のプラカードを掲げて事件に強く抗議した。

 安倍首相がすべきは、オバマ大統領に沖縄の現状を知ってもらうことだ。そして、今回のような事件の発生は米軍への日本国民の信頼を失墜させ、日米同盟を根本から揺るがしかねない旨を伝える必要がある。

同盟を崩壊させる危険も

 沖縄県民は、本土とは違った角度から日米関係を見詰めている。重い基地負担に加えての度重なる米軍関係者の犯罪が、日米関係を一角から崩壊させる危険があることを強調したい。