衆院選挙制度、党利党略超え改革案実現を
衆院選挙制度に関する有識者の調査会が、大島理森議長に改革案を答申した。
「1票の格差」を是正しつつ、地方にも一定の配慮をしており、妥当な内容と言える。各党は党利党略を超えて改革案を実現すべきだ。
「アダムズ方式」を提案
改革案は、衆院議員の定数を小選挙区で6、比例代表で4削減して465とすることや5年ごとに小選挙区の区割りを見直すことなどを求めている。小選挙区の1票の格差を「2倍未満」にするよう要求し、定数配分には人口比がより忠実に反映される「アダムズ方式」の導入を提案した。
地方から首都圏への人口流入が続く中、1票の格差を是正するには東京などの選挙区を増やし地方の選挙区を減らさなければならない。しかし、こうした措置を取れば地方の声が政治に反映しにくくなる恐れがある。
アダムズ方式は格差を縮めつつ、どの都道府県も当面は定数2以上を確保できる。導入は妥当だろう。アダムズ方式で格差を2倍未満とするには、東京、愛知など5都県で計7増やし、宮城、広島、沖縄など13県で1ずつ減らす「7増13減」が必要となる。
議席減を求められる県の多くに強固な地盤を持つ自民党からは、改革案に強い反発の声が上がっている。党幹部からは、都道府県への議席配分を維持したまま選挙区の線引きを見直して格差を是正する案も出ている。
ただ、この方法では近いうちに格差が再び2倍を超えてしまうだろう。最高裁ではすでに3回連続で衆院選の違憲状態判決が出ている。党総裁である安倍晋三首相は、調査会の改革案を尊重する意向を示してきた。党内をまとめて実現に向けて動くべきだ。
一方、改革案は定数削減について「多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束だ」としながらも、国際比較などから「削減する積極的な理由や理論的根拠は見いだしがたい」と記載した。定数を減らせば、多様な民意をすくい切れないとの意見もある。「身を切る改革」と唱える維新の党は一層の削減を求めているが、議論の余地があろう。
もっとも本来、選挙制度の抜本改革は衆参両院で一体的に行われるべきものだ。参院選でも1票の格差が問題となり、県域を越える選挙区の合区が行われた。しかし、衆院同様に格差是正のために制度改革を進めれば第2衆院化が加速し、参院としての独自性がかすんでしまうことは避けられない。
米国の上院議員は人口にかかわらず各州から2人ずつ選出されるため、1票の格差は問題にならない。参院議員もこれと同じように地方代表としての性格を持たせるべきだとの意見も出ている。
憲法で両院の役割定めよ
選挙制度の抜本的改革を進めるのであれば、衆参両院の役割分担について結論を出し、憲法で定める必要がある。
今夏の参院選に向け、緊急事態条項など改憲のテーマについても議論されているが、衆参両院の在り方も重要なテーマの一つだ。
(1月16日付社説)