スキーバス転落、法令違反の厳しい追及を


 長野県軽井沢町の国道18号碓氷バイパスで、大学生らスキー客を乗せた大型バスが道路脇の崖下に転落し、乗員2人を含む計14人が死亡、26人が重軽傷を負った。安全運行のためのルールは守られていたのか。徹底的に究明し、再発防止につなげなければならない。

大事故が後を絶たず

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転落した山林から重機で引き上げられるスキーバス=15日午後0時32分、長野県軽井沢町

 長野県の北志賀や斑尾高原方面に向かっていたバスは、下り坂の緩やかな左カーブで、対向車線に入り、ガードレールを越えて崖下3㍍に転落した。

 事故当時、天候は晴れまたは曇りで、路面は凍結していなかった。現場にはブレーキ痕もなく、「左右に蛇行した後に衝突した」「猛スピードでカーブに突っ込んだ」などの証言から、居眠り運転や運転手の突然の体調変化などが考えられる。

 死亡した乗客の多くに脳の損傷などがあった。就寝中の無防備な状態で頭部に強い衝撃を受けたとみられる。乗客によると、運転手からシートベルト着用の指示はなかった。着用が徹底されていなかった可能性もある。

 バスを運行していた「イーエスピー」では、昨年2月の定期監査で運転手13人中10人が健康診断を受けていなかったことが判明。定められた適性診断も14人中2人が受けておらず、今月13日に道路運送法に基づく行政処分を受けていた。

 今回のツアーについても、運行ルートを記入すべき指示書に詳細な記載がなかったことや、運転手(65)が出発前に義務付けられている健康チェックを受けていなかったことも明らかになった。運行会社の法令違反について厳しく追及すべきだ。

 また、運転手は再就職で、働き始めた昨年12月以降、計4回しか勤務していなかった。事故を起こした長さ12㍍のバスの運転はほとんど経験がなかったという情報もある。

 一方、旅行会社「キースツアー」が企画し、格安をうたった1泊3日のツアーの料金は1万3000~2万円弱だったという。貸し切りバスの事業者は、2013年度に全国で4512社。規制が緩和された00年に比べ約1・5倍に増えたが、従業員30人以下の中小業者が全体の88%を占めている。

 当然、顧客の奪い合いが激しい。それにつれて、消費者の購入意欲をそそる新商品・新サービスの開発も進もう。100円単位で価格の値下げ競争も続いている。事故の背景として認識すべきことである。

 ツアーバスによる大事故は後を絶たない。12年4月、群馬県の関越自動車道でディズニーランドに向かう高速バスが防音壁に衝突し、7人が亡くなった。事故原因は運転手の居眠りだったが、この時も出発前の健康チェックや乗務時の点呼に不備があった。

 この事故を機に、国土交通省は許可審査の厳格化など安全対策を進めてきた。運転手の体調変化などに応じて、運行中止を指示する運行管理者を社内に置くことも義務付けた。

きめ細かい監査必要

 しかし今回、その反省は生かされなかった。今後、国交省のバス事業者に対する監査を頻繁にするなど、事故回避のきめ細かい手立てが早急に必要だ。

(1月17日付社説)