米一般教書、「世界の警官」否定は疑問だ


 オバマ米大統領は、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。オバマ大統領にとっては今回が最後となった。

 先鋭化する党派対立

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12日、ワシントンの米議会で、一般教書演説を行うオバマ大統領(AFP=時事)

 オバマ大統領は冒頭で「我々は途方もない変化の時代に生きている」と語った。今回の演説は、1年間の政策課題を個別に論じる従来のスタイルにはとらわれず、むしろ米国の将来像や可能性に焦点を当て、改めて米国の団結を呼び掛けた。

 演説では、2008年のリーマン・ショックから景気回復に導いたことやクリーンエネルギーの推進、保険の未加入者を減らす医療保険制度改革(オバマケア)など7年間の実績を訴えた。一方で「自らの任期中に政党間の憎悪と不信を深めたことは残念なことの一つだ」とも語った。

 オバマ大統領と野党・共和党との間の溝は深く、13年10月には予算が成立せずに政府機関閉鎖に至ったこともある。現在も銃規制などをめぐって対立が先鋭化している。いかに克服し、政治を立て直すかが残り1年の任期の課題と言えよう。

 外交面では、英仏独なども交えた交渉でイランの核開発を制限する行動計画の合意にこぎつけたことや、キューバとの国交回復実現などをアピール。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦では、米国が主導する有志国連合が空爆などでIS指導者や資金源の油田、訓練施設や武器を破壊し、効果を上げていると強調した。

 また、4度目の核実験を強行した北朝鮮などを念頭に「米国民と同盟国を守るために必要であれば単独でも行動する」と明言した。だが、核実験は地域の平和と安定を脅かす暴挙だ。北朝鮮を強く非難すべきではなかったか。

 さらに、米国は「世界の警察官」にならないと改めて断言したことも疑問が残る。国際危機の解決に向け、他国に相応の役割を求めることは理解できる。しかし、米国が国際社会で指導的立場にあり、平和、あるいは自由や民主主義などの普遍的価値観を守る役割を持つことに変わりはない。

 米国が軍事面を含め、積極的に世界の平和維持に関与しなければ、国際社会の混乱はますます大きくなろう。ISが台頭したのも、米軍がイラクから撤退したことで「力の空白」が生じたためだ。

 現在の世界には、ISや北朝鮮のほか、南シナ海での人工島造成など強引な海洋進出を行う中国や、ウクライナ危機を引き起こしたロシアのように平和を脅かす国家がある。こうした情勢の中で、米国の存在は欠かせない。

 オバマ大統領は「米軍は世界史上最高の戦闘部隊」「世界の人々は中国やロシアではなく、われわれの指導力を必要としている」と述べた。その通りだ。米国に求められるのは、国際社会を主導し、世界の安定を実現する決意と行動である。

 「例外主義」を重んじよ

 戦後の歴代米大統領は、米国が世界をリードする責任を持った特別な国家だと信じてきた。オバマ大統領は、こうした「米国の例外主義」を重んじる必要がある。

(1月14日付社説)