自民党大会、改憲へ懸案を着実に解決せよ
今年立党60年の節目を迎える自民党が党大会を開催した。採択された平成27年運動方針は「日本の文化・伝統・国柄に立脚し憲法改正を党是として出発した保守政党としての矜持(きょうじ)」を持つことを「改めて胸に刻まねばならない」と強調した。安倍自民党は、憲法改正の実現に向けてそれに先立つ懸案を着実に解決していかねばならない。
賛同者の拡大運動推進
自民党が改憲を前面に打ち出した背景には、来年の通常国会に改憲原案を提出し、同年夏の参院選あるいは衆参ダブル選挙で圧勝して秋の臨時国会で衆参両院の「3分の2以上」による改憲発議を目指すというシナリオがある。
しかし、発議ができても、国民投票で過半数を得なければ改憲は実現しない。それ故、早急に対処しなければならないことは、国民各層の幅広い理解を得ることだ。運動方針はそのために「憲法改正推進本部と組織運動本部の連携のもと、憲法改正賛同者の拡大運動を推進する」としている。
だが、それが本気であれば何故、安倍晋三首相は総裁演説で改憲に触れなかったのか。首相がリーダーシップを発揮し先頭に立って国民運動を盛り上げていくべきであろう。
そのためにも眼前に横たわっている懸案を解決していくことが必要だ。平成24年12月に政権を奪還して以来、国政選挙では衆院選、参院選ともに圧勝し自民「1強」体制を築いてきた。首相の足を引っ張る議員はほとんどいない。任期満了に伴う9月の総裁選は首相の再選が確実視されている状況でもある。
ただ、その一方で昨年の滋賀、沖縄、今年の佐賀の各知事選は3連敗し、地方での戦いは苦戦続きだ。デフレ脱却と経済再生をより確実なものにするためにも、まずは経済対策を最優先にし、平成26年度補正予算や27年度予算、27年度税制改正などで後押しすることが不可欠だ。また、アベノミクスの根幹である地方創生は、地方を応援し、元気にするための決定打である。「まち・ひと・しごと総合戦略」を具体的に実施しなければならない。
首相は大会で統一地方選勝利によって「日本の夜明けを確かなものにしていこう」とも呼び掛けた。党の足腰を強め、来年の国政選挙の実動部隊となる地方議員数を増やすことは至上命題だ。
与党協議が進む安全保障法制の整備、農協改革を通じた成長戦略の実現、道徳教育の教科化などの重要懸案を一つひとつ前に進めていかねばならない。論戦中の「政治とカネ」の問題は国民の不信を招いている。それなのに、党大会では反省の声すら聞かれなかった。その原因が自民「1強」体制から来る驕慢(きょうまん)にあるとすれば見過ごせない。
慢心せず謙虚な姿勢を
内閣支持率は5割に近い数字で、不支持率を大きく上回っている。それはアベノミクスをはじめとした諸改革に国民の期待値が依然として高いことを意味している。改憲に向け決して慢心せず、「改革断行国会」との位置付けではあるが他党の声にも耳を傾ける謙虚な姿勢が求められる。
(3月10日付社説)