国家安全保障基本法制定を土屋正忠 衆議院議員に聞く(自民党)
――日本を取り巻く北東アジアの安全保障環境が厳しくなっているが。
国家の独立と国民の安全を守ることが第一。だからこそ、国防が国策の最優先事項だ。
日本の国家目標を平和国家になることと位置付けて国内外にアピールしていくことが非常に重要だと思う。ただ、平和国家であるからこそ近隣諸国とのパワーバランスを失わないように国防の努力をしないと、結果として平和国家でなくなってしまう。
この20年間ぐらいで中国の国防費は約20倍になった。脅威というのは、国家の軍事的能力と意思を合わせたもの。中国は能力を持ってきた。尖閣諸島に対する意思についてもはっきりしている。これは能力と意思が備わっているのだから、日本もそれに対応した防衛力を持たなければならない。
北朝鮮は軍事優先国家であることは確かだ。再び核実験をしたが、日本にとって脅威なのは、核弾頭の小型化によるミサイル搭載が現実のものとなること。数千キロ離れた米国より日本と韓国にとって直接の脅威となるだろう。また、北朝鮮の体制が相当危ういものであり、偶発的な事件が深刻だ。日本の対抗措置としては、経済や人の往来などの規制強化などだがこれで十分だろうか。
ロシアも一時期国防力が落ちたが経済の発展に伴って強化している。これらに対して抜かりなく対応することが大事だ。
――米国との同盟の意義は。
世界最大の軍事力を持つ米国と太平洋を越えて同盟を結ぶのは正しい選択であるし、その中できちんと役割分担をしていくことが重要である。日米中の関係は正三角形であってはいけない。最近は、日米同盟関係を否定する人は少なくなり、同盟の質が問われるようになってきた。
日米安保条約は、米国には日本を守る義務がある一方、日本には米国を守る義務はないものの日本国内に米軍に基地を提供するという非対称的関係になっているが、これからもそのままでいいのか。
日米が同盟関係を強化するということになれば集団的自衛権の問題に踏み込まざるを得ない。集団的自衛権を行使できるような法整備をすべきだと思う。そのために憲法解釈を変更すれば早いが、国家安全保障基本法を作って規定していくのが一番いいと考えている。
96条改正し改憲要件緩和を
――自民党が昨年の衆院選の政権公約の中で、憲法改正により自衛隊を「国防軍」と位置付けると明記したことについては。
これだけの陸海空の軍備と態勢を持っているのが国防軍でなければ何なのか。自衛隊の名称は警察予備隊から始まったのだが、ほとんどのマスコミが「軍」という言葉を使うのにアレルギーを持たせる論調を展開してきたので、国民に心理的な抵抗が生じている面もあるのだろうが、それは機会をみて国防軍と位置付ける方が自然ではないか。
――憲法改正にどう取り組むか。
日本国憲法は世界で稀な硬性憲法だ。改憲するには、両院で3分の2以上の賛成決議をしその上で、国民投票により2分の1以上の賛成で可決することが必要となっているが、かなりハードルが高い。世界各国を見ても国家の基本法は時代とともに変わる。まずは憲法96条を改正して、改憲要件を緩和すべきだと思う。
――学校教育の内容についてさまざまな角度から議論されている。どういう教育が望ましいか。
発達段階に応じた教育が必要だと思う。小学生レベルは偉大な研究をした人とか、津波から人々を救った物語「稲村の火」の主人公浜口梧陵(儀兵衛)の生涯などの話をもっと教えたらいい。
中学や高校では国家の話にレベルを上げる。例えば、明治維新の3傑と称され近代国家を作った大久保利通の話がいいのではないか。座右の銘「為政清明」を紹介しながら国家の在り方を考えさせ、同時に規範教育をする。すなわち、発達段階に応じたモラル教育を通じて、自然に愛国心が発露するようにしていくことが肝要だ。
(聞き手=早川一郎)