原発再稼働で安価な電力を


 北海道電力は家庭向け電気料金の平均17・03%の値上げを経済産業省に申請した。泊原発(泊村)の再稼働が見通せず、火力発電の燃料費が収益を圧迫するためだ。

 東日本大震災以降、同社を含む電力7社が料金の本格的な引き上げを行ったが、再度の値上げは初めてとなる。

経営厳しい電力会社

 北電は経産省の認可が不要な企業向け料金も平均22・61%引き上げる。前回は家庭向けで平均7・73%、企業向けで11・00%だったが、今回はそれを大きく上回る。

 前回の値上げ幅は、泊原発1~3号機が昨年12月から今年6月に順次再稼働することを前提に決めた。だが原子力規制委員会の審査が長期化し、運転再開のめどは立っていない。北電は2014年3月期連結決算で、629億円の純損失となり、3期連続で赤字に陥った。泊原発が再稼働せず、再値上げも行わなければ、財務悪化が進行するのは避けられない。

 他の電力会社も原発停止のため経営は厳しく、再値上げに向けた動きが広がりかねない。関西電力の場合、高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働の見通しが立たない上、黒字転換には安全審査が難航している大飯原発3、4号機(同)を動かすことも必要だ。東京電力に関しても、7月の再稼働を見込んでいた柏崎刈羽原発は安全審査が始まったばかりで、このまま財政悪化が進めば巨額の損害賠償の財源捻出が難しくなる。

 電気料金が上昇すれば家計の大きな負担となり、堅調な個人消費に悪影響を与えよう。企業のコスト増にもつながる。民間シンクタンクの試算によれば、2割上昇で企業の利益を3年間で11・2%押し下げ、国内総生産(GDP)が6・2兆円分失われる。これでは、賃金上昇、消費拡大、投資増加につながる「経済の好循環」を実現することはできない。

 値上げを抑えるには、安全性が確認された原発の早期再稼働が欠かせない。規制委の安全審査に関しては、7月に九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が事実上合格し、早ければ秋にも再稼働する見通しだ。ただ、九電も川内だけでは収益改善には不十分で、玄海原発3、4号機(佐賀県)の早期稼働に期待を寄せている。他の原発についても規制委の迅速な審査が求められよう。

 14年4~6月期の連結決算は、東電、関電、九電、沖縄電力の最終損益が赤字だった。電力10社合計の燃料費は前年同期比1%増の1兆2700億円で、東日本大震災以降では最多となった。これ以上、国富を流出させるわけにはいかない。

 今年は稼働原発がゼロの状態で、電力需要が高まる夏を迎えた。老朽化した火力発電にトラブルが生じれば、大規模停電に見舞われることもあり得る。

懸念される大規模停電

 東電福島第1原発事故が起きた際、その原因について「想定外」とした電力会社が厳しく批判された。

 停電は十分に想定可能で、発生すれば住民の生命に危険が及ぶ。こうした状況を放置することはできないはずだ。

(8月2日付社説)