企業好決算、自律的成長へ積極投資を


 緩やかな景気回復を背景に好決算の企業が相次いでいる。円安や消費増税前の駆け込み需要が追い風になったようだ。

 今期も増益予想の企業が少なくないが、伸びは小幅にとどまる。為替要因がなくなり、反動減がマイナスに働くからだ。消費増税の影響がどの程度なのか不透明だが、更なる成長を見据えた不断の経営努力と積極投資が重要である。

今期の増益は小幅と予想

 東京証券取引所に上場する企業の2014年3月期決算の発表がピークを迎えた。これまでの発表をまとめると、金融を除く東証1部上場企業の14年3月期決算は、売上高が前期比13%増、経常利益は48%増と大幅な増収増益である。

 自動車メーカーでは富士重工業やスズキなどが過去最高益を更新。パナソニックも大胆な事業改革が奏功して3年ぶりに黒字転換を果たした。

 14年3月期は為替水準が1㌦=100円程度と、前期に比べ20円近く円安になり、輸出企業には大きな追い風となった。消費増税前の駆け込み需要も自動車や冷蔵庫などの白物家電など耐久消費財を中心に生じ、業績拡大を後押しした形である。

 また、政府の強い要請もあり、今春闘で大企業を中心に一時金の増額やベースアップに応じたところが多く、消費者の財布のひもを緩ませる誘因になったこともあろう。

 ただ15年3月期については、増益予想が多いものの、伸びは1・5%増と小幅にとどまっている。業績予想の前提となる為替水準を1㌦=100円と前期とほぼ同水準に想定し円安効果を見込んでいないこと、それに消費増税と駆け込み需要の反動減の影響を考慮したものだ。

 さらに気になるのが、エネルギーコストの高まりである。上場企業全体では好決算が相次ぐが、電力各社は厳しい状況が続いている。

 原発を代替する火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの燃料費負担が重荷となり、中部、中国など6社の経常赤字総額は4400億円に上る。東電と東北電は電気料金の引き上げと経費圧縮で3期ぶりに黒字転換となったが、原発依存度が高い九州、関西、北海道、四国の4社は3期連続の赤字。経営悪化が目立ち、社債発行もままならない。

 経営合理化の余地も小さくなっており、関電は経営悪化に備えた積立金を全額取り崩す方針を表明している。東日本大震災直後に6400億円あったが、底を突く状況である。原発再稼働の見通しが立たない中では、電気料金の再引き上げ申請もやむを得ない面があろう。

政府は環境整備進めよ

 消費増税の影響がどの程度なのか見極めにくい中、企業にとっては積極的な設備投資に踏み切りにくい面もある。政府としては、景気の腰折れを防ぐ上でも、企業投資の環境整備を進めたい。法人税の減税など6月に示される予定の新たな成長戦略の中身がますます重要ということである。

 また、産業の血液である電力を安価で安定的に供給するために原発の再稼働は欠かせない。これも重要な環境整備である。

(5月13日付社説)