左派のボリッチ氏が勝利 チリ大統領選挙


チリ大統領選に臨んだ左派ガブリエル・ボリッチ下院議員=16日、サンティアゴ(EPA時事)

 南米チリで19日、ピニェラ大統領の任期満了に伴う大統領選挙が実施され、左派連合のガブリエル・ボリッチ下院議員(35)が勝利した。就任は来年3月11日、任期は4年。

 今回の選挙は、学生運動出身で反政府デモのリーダーから政界入りした左派のボリッチ氏と、移民排斥発言や過去の軍事政権擁護などで「南米の第2のトランプ」とも呼ばれる右派のホセアントニオ・カスト元下院議員(55)の両者による「右派と左派の激突」が注目を集めていた。

 チリでは、ピノチェト軍事政権(1973~90年)以後、穏健左派と穏健右派が交代しながら政権を担当してきた。今回の選挙は、安定した政治・経済の中で「南米の優等生」とも言われてきた同国で、貧困、格差、移民や治安など多くの問題が噴き出す中、世論は大きく二分された。

 投票前は接戦も予想されたが、開票率99%超の時点で、ボリッチの得票率は55%超、対するカスト氏は44%と10ポイント以上もの大差がついた。カスト氏は敗北を認めた。ボリッチ氏は来年3月、チリで最も若い大統領として就任するが、1980年代以降に生まれたミレニアル世代の大統領の誕生は世界でも2例目。

 南米では、昨年11月のボリビアに始まり、ペルー、ニカラグア、ホンジュラスと左派政権の誕生が相次いでおり、「左傾化の波」が、来年5月のコロンビアと10月のブラジル大統領選挙に与える影響も少なくない。

 一方、ボリッチ氏は、ベネズエラやニカラグアなどのように、強権的な社会主義ではなく、欧州左派が導入する社会民主主義に近い政治思想の持ち主だといわれている。ただし、ボリッチ氏は、今回の選挙でチリ共産党とも選挙協力関係を結んでおり、何らかの政治協力は求められるとみられている。

 また、チリは、環太平洋経済連携協定(TPP)のメンバーだが、ボリッチ氏は、選挙期間中に同協定の批准に慎重な姿勢を示している。

(サンパウロ 綾村悟)