オリンピック東京大会に反対を続ける「赤旗」
感染対策の理由は二の次か? 「密」なデモで五輪中止運動
日本の史上最多となるメダル獲得など、真剣勝負の競技に数々のドラマが生まれた東京五輪が閉幕、24日から舞台はパラリンピックに移る。新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行)の中で、アスリートたちの活躍はわが国をはじめ、それぞれの出身国・地域の人々に感動を呼び起こしたが、開催を争点化した与野党においては不毛な世界が広がっている。
五輪が始まっても共産党機関紙「しんぶん赤旗」(8・3)は小池晃書記局長の記者会見から「五輪中止」を求める記事を載せ、パラリンピック選手団の入国に対し「自治体が懸念」(見出し)と批判報道。
これに公明党の機関紙「公明新聞」(8・5)は、2面「編集メモ」で「今も五輪中止訴える 共産の独善性が浮き彫りに」と題して、次のように批判した。
――東京五輪での日本の快進撃に列島が沸き、マスコミ各社は選手の活躍や喜び、努力を大きく報道している。しかし、日本共産党の機関紙「赤旗」は、コロナ禍を理由に今も五輪中止を求め続けている党の方針に従い、競技結果の記事は11面や12面といった後ろの方の紙面の、しかも下部に集めて、写真も付けずに報じるだけだ。五輪開幕前日の7月22日付で「『赤旗』は『五輪中止を』の立場を堅持、報道にあたります」と断りを入れていたが、連日の紙面を見て、「ここまで突き放した扱いをするのか」と驚く――
しかし、その後の閉会式に「赤旗」は9日付で「感染爆発のなか五輪閉幕/中止の声最後までやまず」(見出し)と強弁、パラリンピックに対しても12日付で「東京パラやめ命守れ」(見出し)と傘下の障害者団体の要請活動を扱った。
五輪直前に開催地の東京都で都議会議員選挙があり、招致運動の段階から東京五輪・パラリンピックに反対していた共産党は昨年来のコロナ感染に中止運動の力を得て、今秋の衆院選をにらんで選挙公約にした。7月4日投開票の都議選では、立憲民主党と協力し前回と同じ19議席を得て中止運動は止められない。
五輪開幕前を振り返れば、7月20日付で「赤旗」は「東京五輪の開会が4日後に迫った19日、元駐仏大使の飯村豊さん、東大名誉教授の上野千鶴子さん、ジャーナリストの春名幹男さんが、開催中止を求める緊急ネット署名を東京都と五輪組織委員会に提出しました」(リード)と、1面トップで「中止決断を都に緊急署名/元駐仏大使ら提出」の見出しで報じるなど中止世論を煽(あお)った。
また同19日付1面トップは「命軽視の政治に異議」「『五輪中止を』 東京でデモ」の写真と記事だ。中止運動に熱が入っているわけだが、理由に掲げるコロナ対策が二の次に感じられるのは、同20日付に載る署名を渡す写真の飯村、上野、春名の各氏はマスクを着用していない。コロナ対策のアピールではない別の政治宣伝と見える。
同19日付のデモ写真は密集状態だ。写ってるだけでも何十人もが帽子、眼鏡(サングラス)、マスク姿で、「密」なのだ。「命軽視の政治」運動を行っているのは自分たちだろう。ちなみにマスク姿は、顔を判別されない目的でコロナ禍よりだいぶ以前から左翼系デモに見られる習慣だ。
共産党が感染拡大の原因と批判する五輪だが、大会組織委員会のコロナ検査64万4千件の陽性率は0・02%で、緊急事態宣言下の東京都の検査件数における陽性率が2割を超えていることを踏まえると、かなり少ない。新型インフルエンザ対策特措法改正審議で、緊急事態宣言を弱める「要請」次元に骨抜きにした野党側にも問題があるだろう。
編集委員 窪田 伸雄