’21首都決戦 旋風なき都民ファースト
“生みの親”登場に望み
「4年前はここに小池百合子都知事が一緒に立ち、『中野区にお嫁に出しました』と言ってくれた」
中野駅前で告示日の25日、宣伝カーの上から百合子グリーンのタスキを着けた都民ファースト(都民ファ)代表の荒木千陽はそう叫んだ。
特別顧問の小池百合子が過労により告示の3日前、急遽(きゅうきょ)入院してしまった。都民ファ支援を明言しておらず、対応が注目されていた矢先でもあったため、関係者の動揺は続いている。
29日現在も入院中で、公務復帰のめどすら立っていない。選挙期間中に応援に駆け付けることができるのかも、見通せない状況だ。しかし、都民ファ候補者は“生みの親”の登場に最後の望みを託している。
中野区の議席数は3。事務所での出陣式で応援に駆け付けた区議は「共産と立憲民主はタッグを組んで席を確定し、公明は組織力で席をもう取っている。最後の1議席を争うのは自民新人と荒木だ」と熱弁を振るい、陣営を引き締めた。
前回2017年の都議選では「小池旋風」の影響により、それまで都議会第1党だった自民と公明が連携を解消。公明と手を組んだ都民ファは、50人の候補者中49人を当選させ、追加公認を含めて55議席となり、初陣ながら第1党に躍り出た。
だが今回は、風が全く吹いていない。47人の立候補者のうち1桁しか当選できないのではとの分析もあり、生き残りを賭けた厳しい戦いになっている。
都民ファの候補者は、いまだ現れない小池を前面に打ち出し、「古い都議会を知事と共に変える改革を止めてはならない」とアピールする。しかし、自前の国会議員を持たず、区議の基盤も乏しく組織力の弱さに苦しむ。
一方、「(都民ファは)同情票を獲得する可能性がある」(公明関係者)と警戒する声もある。知事に対する都民の人気は健在だ。党の公約である「五輪無観客」開催も大会開催を不安視する層を取り込む可能性がある。
小池の過労を「自分のまいた種」と語った麻生太郎に狙いを定め、ツイッター上で「倒れた人に唾を吐き捨てるやはり古い政治を変えていかなければ国に引きずられて東京まで沈没する」(荒木)と訴えるなど、主敵・自民の牽制(けんせい)に躍起だ。(敬称略)
(都議選取材班)






