日米関係 日本は同盟での役割拡大を
旧日米安全保障条約が締結されてから今年で70年。新安保条約締結からすでに60年以上が経過している。
覇権主義的な海洋進出を強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる中、日米安保体制の重要性は増している。ただ中国の軍拡が続く一方、米国の国力は相対的に低下しており、日本は同盟における役割の拡大を図るべきだ。
G7も厳しい対中姿勢
ロンドンで開かれていた先進7カ国(G7)外相会議は、覇権主義を強める中国に「重大な懸念」を表明する共同声明を採択した。声明は「台湾海峡の平和と安定の重要性」も強調。G7が結束して中国に厳しい姿勢を示したことで、西側諸国と中国の対立関係が鮮明となった。
これは4月の日米首脳会談後の共同声明を踏襲した内容で、G7外相会議の共同声明で台湾に言及するのは異例のことだ。共同声明では、中国が反対している世界保健機関(WHO)などの国際会議への台湾の参加を支持する考えも示した。
日米豪印4カ国が中国を牽制(けんせい)する中、英国やフランス、ドイツもアジアに軍艦を派遣する動きを見せ、中国共産党政権に圧力をかけ始めている。ただ対中包囲網を構築する上で主要な役割を果たすのは、やはり日米両国だろう。
在日米軍を傘下に置く米インド太平洋軍の新司令官に就任したアキリーノ海軍大将は3月、上院軍事委員会で中国が台湾を侵攻する時期について「大方の予想よりずっと近い」と警告。デービッドソン前インド太平洋軍司令官も同月、中国の軍拡が予想を上回るペースで進んでおり、6年以内に台湾に対して武力を行使する危険性が高まっていると訴えた。
そのアキリーノ氏が今月後半に来日する。岸信夫防衛相や山崎幸二統合幕僚長らと会談し、菅義偉首相との会談も調整する方向だ。中国による台湾侵攻を抑止するため、日米の連携を一層強化しなければならない。
中国の軍拡はとどまるところを知らない。2021年の国防予算は前年比6・8%増の1兆3553億元(約22兆6000億円)に上っている。年内には3隻目の空母が進水するほか、今後10年程度で保有する核兵器の数を倍増させる勢いだ。こうした中、日米同盟の深化と共に求められるのは日本自身の防衛力強化である。
中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、中国海警船が尖閣沖で領海侵入を繰り返している。日米首脳会談で、バイデン米大統領は尖閣が日米安保条約第5条の適用対象であると改めて表明した。だが中国の軍拡のペースを踏まえれば、日本は米国頼みに終始せず、自身で尖閣を守るための体制を整備する必要がある。
防衛費を大幅に増やせ
コルビー元米国防副次官補は時事通信のインタビューで、中国に対して「日本が防衛予算を国内総生産(GDP)の1%程度にとどめるのは、戦後最大の安全の脅威に立ち向かう方法ではなく、2%が最低限必要だ」と述べている。日本は日米同盟における役割拡大に向け、防衛費を大幅に増やすべきだ。