こどもの日 社会的弱者より親の愛の対象


 きょうは「こどもの日」。少子化や児童虐待、貧困など子供をめぐるさまざまな課題に取り組むため、政府・自民党は「こども庁」の創設に向け準備を進めている。子供をめぐる課題を解決するには、家庭の価値の確認が不可欠だ。

止まらない少子化の加速

 総務省が発表した15歳未満の子供の人口推計(4月1日現在)によると、2021年は前年に比べ19万人少ない1493万人で、1982年から40年連続の減少となった。少子化の加速が止まらない。国連人口統計年鑑(2019年版)によると、子供の人口に占める割合は、人口4000万人以上の33カ国中で日本が最低だ。

 これは、わが国の未来にとって実に深刻な状況である。子供は、家族はもちろん、その国の未来そのものである。子供の存在なくしてその国の未来像を描くことはできない。

 日本は国土が狭いから、人口抑制が重要だという誤った観念が、戦後支配してきた。その残滓(ざんし)は今も形を変えて残っている。少子化の流れは先進国では必然で、少子化を前提にしたさまざまな経済・社会政策を作り上げる必要があるという考えもその一つである。

 少子化の流れは食い止めなければならない。為政者は経済社会構造、社会政策だけでなく、「おひとり様」に象徴される極端な個人主義や家族の価値の軽視など、国民をいわば洗脳してきた価値観の問題にも踏み込んでいく必要がある。

 政府・自民党が創設の準備を進めている「こども庁」も、少子化の流れを前提としたものであってはならない。少子化対策を最重要課題の一つに掲げて取り組むべきである。従来の縦割り行政の弊害や無駄をなくし、総合的体系的な施策の遂行を目指すのは理解できるが、その理念が見えてこない。

 少子化や児童虐待、さらに貧困も、基本的には親の問題であり、家族の本来持っていた力が弱体化したことに多くは起因する。家族が再建されて初めて、子供は安定した環境を獲得できる。児童虐待や貧困などに対しては、社会が「親力」の不足を補っていかなければならない。また、子供には一個の人格として対していく必要がある。

 しかし、そのような流れの中で子供を「社会的弱者」としてばかり捉える傾向は望ましいことではない。子供はまず何よりも親が愛情を注ぐべき存在である。子供の健やかな成長に必要なのは、親の愛情であり、子供の福祉はその表れであるという極めて当たり前のことを確認しておきたい。

 これまで高齢者の医療や福祉に向けられた国の予算を、子育てや子供たちのために回すという方向は、基本的に未来志向で正しい選択だ。しかし、高齢者の痛みも伴う以上、実効性のあるものとする必要がある。

親の愛情受け育つ環境を

 「こども庁」創設に向け政府・自民党など、さまざまな素案が出ているが、子供の福祉にとって最も重要なことは、子供たちが親からしっかりと愛情を受け、それを何よりも人生の糧として育っていける環境を整えることである。