比、再びコロナ感染が急増
フィリピンではマニラ首都圏を中心に再び新型コロナウイルスの感染者が急増し、政府が改めて厳しい外出規制を導入するなど対策に追われている。財政的な理由から昨年のような厳格なロックダウン(都市封鎖)は避けたい政府だが、感染が減少に転じない場合は再ロックダウンも辞さない構えだ。(マニラ・福島純一)
経済案じ規制措置は限定的
変異株封じに不十分な恐れ
3月になりマニラ首都圏では、昨年末から小康状態となっていた新型コロナ感染者数が急増。12日には約半年ぶりに1日4000人を超え、それから1週間をたたずして過去最多となる7103人を記録。その後も歯止めはかからず22日には国内初の1日8000人超えを記録し、その後も連日5000~6000人と高止まりが続いている。
このような緊急事態を受け、政府は21日、感染が増加しているマニラ首都圏とその近郊にある4州を同じ防疫措置下にある「バブル」として扱い、州境に警察による検問を設けて必須労働者以外の外出や移動を禁止する措置を22日から2週間の予定で実施すると発表した。変異株と考えられる急速な感染増加をバブル内で封じ込める狙いだ。
昨年の最悪の状況だった時期をはるかに上回る速度での増加だが、政府は前回のような経済活動の停止を伴う厳格なロックダウンは避ける方針を示している。財政的な理由で経済支援ができない状況に陥っているためだ。ドゥテルテ大統領は22日の演説で「再び経済を停止すれば国に別の災害をもたらすだろう」と述べ、今後の感染対策はバランスが重要だと指摘。最小限の外出制限と地域を限定した封鎖で対応する考えを示した。
しかしバブル内の地域では、今回の規制強化を機にスポーツ施設やネットカフェなどが営業禁止となったほか、飲食店の店内での食事を全面的に禁止。屋外スペースでの食事が提供できない店舗は配達と持ち帰りのみに限定される。これに対し、経済を動かし続けるという政府の主張には無理があるとの意見も出ている。
一方、ロケ大統領報道官は、今回の措置で25%の減少が実現できなければ、ロックダウンなどの「強硬手段」も辞さないと述べ、国民に協力を求めた。
フィリピン国内では英国や南アフリカ、ブラジルの変異株のほか、フィリピンで最初に確認された「P.3」と呼ばれる変異株も確認された。昨年を上回る爆発的な感染増加はこれらの変異株が関係している可能性を保健省は指摘している。
一方、フィリピン大学を中心とする専門家グループの「OCTAリサーチ」は、2週間で封じ込めるという政府目標に否定的だ。昨年に実施されたロックダウンのデータから最低でも4週間は必要で、2週間で減少に転じる可能性は限りなく低いと分析。感染拡大が長期に及ぶ可能性を示唆した。
また政府は、さらなるウイルスの国内流入を防止するため、22日から4月21日まで再び外国人の入国禁止を実施する。外国にいるフィリピン人は帰国可能だが、ニノイ・アキノ国際空港では国際線の乗り入れを1日1500人に限定。これを受け、国際便のキャンセルなど利用者に混乱が広がっている。
再び感染が急増し、議会では政府の対策を疑問視する声も強まっている。ホンティベロス上院議員は、閣僚で構成される「新興感染症に関する省庁間タスクフォース(IATF)」の顔ぶれを公衆衛生の専門家に置き換えるよう要請。レクト上院議員も国軍関係者を中心に据えたIATFに疑問を呈し、より効率的な運用をするため民間部門の参加を呼び掛けた。マルコス上院議員はIATFはまだ必要だとしながらも、公衆衛生の専門家や疫学者によって主導されるべきと指摘し、組織の「オーバーホール」を要求した。
すでにマニラ首都圏では、無症状者や軽症者を収容する隔離施設の約8割が占有されており、各地の主要病院ではコロナ病床や緊急治療室が相次いで満床になり始めている。専門家らは4月初旬にも医療崩壊が始まると予測し、政府は厳格なロックダウンを再び実施するかどうかの判断を迫られそうだ。