五輪成功期す「自由民主」
コロナ克服がバロメーター、SDGsなどソフト面を強調
新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)で延期された東京五輪・パラリンピックを7~8月に控える中、菅義偉首相はコロナ克服と東日本大震災復興の証しとなる大会を世界に発信するとの決意を表明してきた。今なお10都府県が新型コロナ感染の緊急事態宣言発令下にあり、大会の行方は文字通りコロナ克服のバロメーターとなろう。
自民党の機関紙「自由民主」は、「コロナ禍乗り越え東京五輪・パラ成功を」と題してスポーツジャーナリスト・二宮清純氏の寄稿を1月19日付から4回連載するなど、東京大会の成功を期している。
同紙年頭の1月5・12日合併号でも、首相が「今年の東京大会は、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災の被災地が見事に復興しつつある姿を世界へ向けて発信する場にする『復興五輪・パラリンピック』として、関係者が一丸となって、7月からの開催を実現する決意です」と、「菅義偉総裁に聞く新年の決意」で訴えている。
一方、野党の立憲民主党の機関紙「立憲民主」ではこれまで大会に全く触れず、東京への五輪招致から反対した共産党は、今国会でも志位和夫委員長が代表質問でコロナを理由に「大会中止」を主張した(同党機関紙「しんぶん赤旗」1・22)。また「赤旗」2月18日付は、1面に「島根県知事 聖火リレー中止検討/『五輪開催すべきでない』」の見出しで島根県の丸山達也知事の発言を扱った。五輪でも政権を揺さぶろうとする議論が絶えない。
ただでさえアスリートが国・地域ごとに競技種目を競う五輪には国威発揚の側面があり、野党は五輪を政権浮揚力にさせまいと不手際や失態を批判する。これもスポーツの祭典に働く群集心理が政治に無関係とは言えないからだろう。しかも今回は世界中がコロナ禍にあり、政権の浮揚を許さないどころか、むしろ日本自体の混迷が危惧される。
果たしてわが国の面目躍如となるのだろうか。「自由民主」は二宮氏の連載1回目に「先進国としてSDGsを推進する大会に」の見出しを付け、高速道路・新幹線、高級ホテルが開業した高度成長期の前回1964年大会と対照した。二宮氏は、脱炭素、資源リサイクルなどのソフト面を重視し環境に優しいSDGs(持続可能な開発目標)が今大会のコンセプトの一つになると、武藤敏郎同大会組織委員会事務総長の話を基に指摘。大会開催の意義を唱えている。
このソフト面には新型コロナ対策も加わり、現在のわが国の取り組みが直接影響することになる。同紙2月2日付には「新型コロナ収束への工程表を提言 3段階で適切な対応を/ワクチン接種へPT設置」との見出しで、1月19日に同党新型コロナウイルス感染症対策本部が首相に提出した「工程表」を扱った。
①感染拡大抑止を図る(緊急事態宣言など)②病原体の封じ込め体制を確立(改正コロナ関連法成立や制度整備)③集団免疫の形成を目指す(ワクチン接種)―の3段階の工程は、現在進行中で、③のワクチン接種もいよいよわが国でも開始された。今後数カ月の推移は目が離せない。
なお公明党の機関紙「公明新聞」は、6日付コラム「北斗七星」に「選手や元選手、大会関係者。さまざまな思いが詰まった東京五輪の成功へ、新型コロナとの『勝負の1カ月』が始まる」と書き、14日付1面は「コロナワクチンと公明党」の大見出しで厚労省による米ファイザー社製ワクチン正式承認に合わせた特集を組んだ。
コロナ克服、大会開催の正念場を迎えている。
編集委員 窪田 伸雄











