中国 スリランカに新港建設

軍事拠点化へ米懸念

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ

 中国はインド洋の戦略的要衝の島スリランカに、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、二つ目の港の建設を進めている。

 中国が最初にスリランカに設けた港は島の南端のハンバントタ、中国企業への99年間の租借合意の下で3年前から操業している。新たな港は首都コロンボ内にあり、中国が2013年以降に投資した83億㌦の一部が建設に充てられている。

 総額13兆㌦に上るとされるインフラ整備計画、一帯一路の下で、これまで主に開発途上国への投資が進められてきた。スリランカは、その中でも重要な拠点となる。

 一帯一路は、中国の世界的覇権拡大のための隠れ蓑(みの)と指摘されており、米政府は、高利で開発資金を融資した上で、返済を迫り、港や鉄道の管理権を獲得する「債務のわな外交」と中国を非難している。

 スリランカはインド亜大陸南端の南東部にあり、戦略的に重要な位置にある。米政府は、中国がスリランカの二つの港と、中国の融資で建設されたパキスタンのグワダル港を拠点に、インド洋の航路を支配する可能性があると懸念している。

スリランカ

 

 中国の世界的な港湾ネットワークは、現在は商用目的に利用されているが、今後、艦艇の拠点など、軍のための国際的な基地ネットワークとなる可能性がある。

 米国防総省の中国の軍事力に関する年次報告は、中国の海外での商業港獲得は、人民解放軍(PLA)の海外への基地設置とアクセスの確保の一環であり、「PLAは、強固な海外への輸送、駐留のためのインフラを整備し、さらに遠方へと軍事力を投射、維持することを目指している」と主張している。

 現在、PLAが海外に持っている基地は、アフリカのジブチだけだが、スリランカの港を含む世界11カ所が、いずれ、PLAの陸海空軍をサポートする軍事輸送基地になるとみられている。

 建設が進む港はポート・シティーと名付けられ、地上の面積は約2・7平方㌔、数カ月前からスリランカ政府と中国港湾工程が共同で浚渫(しゅんせつ)などの建設工事を進めている。

 ラジャパクサ首相は「スリランカの新しいランドマークとしてポート・シティー・コロンボはこの国の開発を牽引(けんいん)し、後の世代に貴重な遺産を残す」と新たな港の建設の意義を強調した。