緊急事態39県解除、警戒緩めず新しい生活様式を


 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が39県で解除された。専門家会議や政府が解除の基準とするところまできたことは喜びたいが、気の緩みが再び感染の拡大を招かないように「新しい生活様式」を実践しながら、感染の終息と経済社会活動の両立を追求していきたい。

 8都道府県は21日に判断

 13の特定警戒都道府県に指定された茨城、愛知、岐阜、石川、福岡の5県も解除対象となったが、北海道、東京都、大阪府など8都道府県は、21日に改めて専門家会議の検討を踏まえ解除の可否を判断する。官民のさらなる努力で、残る地域でも一日も早く解除にこぎ着けたい。

 安倍晋三首相は記者会見で解除の理由について「39県では徹底的なクラスター対策を講じることで感染拡大を防止できるレベルにきた」ことを挙げた。

 政府が定めた解除の基準は①直近1週間の新規感染者が人口10万人当たり0・5人以下に抑えられている②医療提供体制の確保③PCR検査など感染再拡大の傾向を早期につかみ対応できる監視体制――の三つだ。

 ただ、県によって事情はそれぞれ大きく異なる。各自治体が、それぞれの実情を正確に把握し、適切な対処方針を示す必要がある。

 何よりも警戒すべきは、気の緩みである。独自の緊急事態宣言を出し、一度は抑え込みに成功した北海道では感染が再拡大した。海外でも、経済社会活動の再開によって再び感染が拡大したドイツやシンガポールなどの例もある。

 首相は「コロナの時代の『新たな日常』を取り戻す、きょうは本格的スタートの日」と強調した。新型コロナ感染のリスクの中で経済社会活動を少しずつ再開し軌道に乗せられるかどうか、39県での推移が注目されるが、その成否は、テレワークや時差出勤の継続、マスクや手洗いの徹底、「3密」を避けるなど、新しい生活様式をいかに定着させるかに懸かっている。

 各業界団体も職場や業務を行う上でのガイドラインを発表している。新型コロナとの長い戦いには不可欠だ。

 新型コロナに関しては「こうすれば大丈夫という正解はない。試行錯誤を続ける必要がある」とも語った。感染が再拡大すれば、緊急事態宣言の再発令もあり得る。柔軟で敏速な対応が政府にも国民にも求められる。

 検査体制の拡充も急がれる。一昨日承認された抗原検査キットによって来月には1日2万~3万人の検査が可能となる。治療薬のアビガンも今月中の承認を目指しているが、その他わが国企業が開発した治療薬も早く承認されることを期待したい。

 雇用と事業を守るために、雇用調整助成金を特別措置として1日8000円から1万5000円に増額し、雇われている人が直接申請し給付を受ける制度も検討しているという。できるだけ迅速にそれらのお金が給付されるようにする必要がある。

 国難克服への努力を

 国民一人一人の協力によって緊急事態宣言の成果は確実に出ている。経済社会活動との両立という困難な課題の達成も、一人一人の注意深い行動と国難克服への努力に懸かっている。