再処理工場「適合」、核燃料サイクルを立て直せ


 原子力規制委員会は、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)について、操業開始に必要な新規制基準に「適合している」とした審査書案を了承した。

 これを核燃料サイクルを立て直す機会としたい。

 6年以上に及んだ審査

 再処理工場は原発で使用した核燃料に化学処理を施してウランとプルトニウムを取り出す施設。核燃料サイクルの中核施設であり、工場の最大処理能力は年間約800㌧に上る。

 審査実績がある通常の原発と違い、海外でもあまり例がない再処理工場の審査は6年以上に及んだ。審査では、冷却機能を失った結果、高レベルの放射性廃液が沸騰して放射性物質が放出されるといった状況も想定。通常の原発にはなかった事故対策も審査された。

 原燃は2021年度前半に完成させたい考え。青森県や六ケ所村などの同意を得た上で、22年1月の稼働を目指している。ただ規制委は別の審査に1年かかるとみており、実際の稼働時期は不透明だ。

 エネルギー資源を輸入に頼る日本は、核燃料を繰り返し利用してエネルギーの安定供給につなげようと核燃料サイクルを推進してきた。具体的には、使用済み核燃料から取り出したウランとプルトニウムを混ぜて「混合酸化物(MOX)燃料」を製造し、これを活用するものだ。

 しかし、MOX燃料を使うことを想定していた高速増殖炉「もんじゅ」は16年12月に廃炉が決まった。もんじゅは使った以上のプルトニウムを生み出す「夢の原子炉」と言われ、1兆円以上が投じられたが、事故やトラブルが相次ぎ、稼働日数はわずか250日だった。

 通常の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電について、電力業界は全国で16~18基に導入することを目指す。だが、実施は4基にとどまっている。

 政府は国の長期的なエネルギー政策の指針を示すエネルギー基本計画で、核燃料サイクルの推進を基本的方針と位置付けている。政府はもっと積極的にその必要性を訴えるべきだ。

 核燃料サイクルは資源の有効利用だけでなく、高レベル放射性廃棄物の量の減少や有害度の低下などにもつながる。こうした面に関しても、国民の理解を広げていかなければならない。

 エネルギー基本計画では原発について、30年の電源構成で20~22%を目指すとしている。達成には30基程度の再稼働が必要となるが、計画は実現に向けた具体策に触れていない。まずは原発の新増設や建て替えなどを進めないと、核燃料サイクルの実現もおぼつかない。原発は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化への対策にも役立てることができる。

 高速炉の研究進めよ

 高速炉に関しては昨年、日本も協力してフランスが進めていた「ASTRID(アストリッド)」の開発計画が当面見送られたこともあり、先行きは不透明となっている。

 ロシアでは高速炉が実用化されている。エネルギー安全保障の観点から、日本は高速炉の研究を進めるべきだ。