辺野古移設、普天間の危険性除去が原点 宮崎政久・衆院議員に聞く

知事の埋立容認は適切な判断

 宜野湾市にある米軍普天間飛行場移設問題が昨年末、大きく進展した。沖縄県選出国会議員と自民党県連が従来の「県外移設」の主張から「辺野古移設も含め、いかなる選択肢も排除すべきでない」と辺野古移設容認に方針を変えた。昨年3月から懸案だった政府の辺野古沿岸部公有水面埋立申請に対して仲井真弘多知事が先月27日に承認、辺野古移設に向けた作業が動きだした。県選出衆院議員の宮崎政久氏にこうした動きの背景などを聞いた。
(那覇支局=竹林春夫・豊田 剛)

日米地位協定改定へ米国との交渉実現を

辺野古移設、普天間の危険性除去が原点

みやざき・まさひさ 昭和40年、長野県上田市に生まれる。3児の父。明治大学法学部卒業。弁護士。法律事務所など勤務後、平成16年に宮崎法律事務所を開設。翌年、日本青年会議所沖縄地区協議会会長を務めた。一昨年12月の総選挙で初当選。現在は、自民党中小企業政策調査会長補佐、法務部会副部会長、沖縄県選出自民党国会議員「かけはしの会」事務局長を務める。

 ――宮崎議員が支部長を務める沖縄2区は米軍普天間飛行場がある宜野湾市を含む。普天間移設問題について、従来の「県外移設」から「辺野古移設を排除しない」と辺野古容認に主張が変化したが。

 移設問題は、市街地にある普天間飛行場を返還して危険性を除去するという原点に常に忠実であるべきとの考えに変化はない。2009年の民主党政権成立前に鳩山由紀夫氏が「最低でも県外」と発言し、自民党政権時代の名護市辺野古沿岸部移設案が白紙状態になった。私も当時は、危険性除去に最も早く確実な方法は県外の既存施設を活用することと考えた。なぜなら、民主党政権が日米合意に回帰したものの普天間の返還期限や具体的スケジュールを明確にされていなかったからだ。

 しかし、一昨年12月の総選挙で自民党が政権復帰し、状況は大きく変わった。日米両政府は昨年4月に「統合計画」を発表、嘉手納以南の基地返還計画を具体的に定め、普天間飛行場の9年半以内返還を明示した。10月には日米両政府が、辺野古移設が唯一の方法と再確認した。沖縄の基地問題を早急に解決したいという政府の強い姿勢が表れた。

 ここまで状況が進展した段階で、もう一度ちゃぶ台をひっくり返してやり直せるだろうか。それこそ、時間がかかり、普天間の固定化になりかねない。総選挙では「現時点では県外移設を求める」と主張した。しかし、「県外」というひとつの考えに固執して普天間飛行場の危険性除去への道を狭めることは許されない。しかも中国、北朝鮮を含めた東アジアの国際環境の急激な変化もあって、「辺野古移設も含め、いかなる選択肢も排除すべきでない」ことにした。

 ただ、9年半はあまりにも長いため、昨年11月、安倍晋三首相に申入書を提出した。①統合計画を早める②オスプレイ部隊の暫定的県外移駐および県外訓練③空中給油機KC130部隊の岩国基地への早期移転――など8項目を要請した。

 普天間移設問題は沖縄県の問題ではない。日本の安全保障の問題であり、日本全体で防衛とこれに伴う負担を分かち合うべきだ。

 ――昨年末、仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の公有水面埋立申請を承認したが。

 知事の苦渋の決断を積極的に評価する。埋立申請承認は行政手続きとしては適切な判断だ。辺野古移設や埋立承認についてはさまざまな意見があることは知事も私も承知している。しかし、普天間の固定化を認めないためにはいかなる可能性も排除すべきではない。名護市の意見も含め、すべてを受け止めた上で、判断したのは適切だ。

 さらに、普天間移設は、嘉手納以南の米軍施設1048ヘクタールの返還とつながっている。普天間移設は米軍再編のパッケージから外されたが、嘉手納以南の施設返還には普天間移設が条件になっているものもあり、連関している。

 今月の名護市長選では、辺野古推進と反対の候補が立候補した。どちらが当選しても、辺野古移設に少なからず影響するだろうが、普天間の危険性除去のための辺野古移設という流れに大きな変化はないだろう。

 ――知事は、埋立申請承認の直前に安倍首相に会って①普天間飛行場の5年以内の運用停止②牧港補給地区(沖縄県浦添市)の7年以内の全面返還③日米地位協定の改定④普天間飛行場のオスプレイの半数を県外拠点に移転――の4項目を要請した。

 国会議員は国益と県益の両方に資するものを追求して実現していくが、県知事の仕事は県民の最大幸福を追求していくことだ。知事の要請は私の申入書の4項目と軌を一にしているが、知事の要請自体は正しいことである。これに対し、安倍首相が「しっかり取り組む」と明言したことに大きな意義がある。

 4項目の中でも、日米地位協定の改定に言及し、政府が米国と交渉することは意義がある。これまで改定を求めても米国と交渉すらされなかった。このことは、基地問題で県民が納得していないことの一つの象徴だった。米国との交渉で改定が実現すれば、県民の悲願達成の一歩になる。私もそのために努力する。

 ――今年の目標は。

 昨年同様、今年も「デフレからの脱却」が一番だ。昨年、金融緩和、積極的な財政出動、成長戦略政策のアベノミクスの「3本の矢」で経済を力強く立て直す仕組みはしっかりできたが、まだ道半ば。4月には消費税が3%増税されるが、景気の腰折れがあってはならない。このため、アベノミクスの3本の矢は出続ける。今、中小企業、小規模零細企業に傾注した景気回復と賃金上昇の施策を検討している。

 ――憲法改正についてはどのような考えか。

 日本国憲法の制定当時、米国施政下にあった沖縄県は、制定に関わっていない。沖縄県を含めて全国民の手で憲法は制定されるべきであり、本来、全面改訂すべきだ。しかし、現実的には前文および条文ごとに現憲法の内容を検討し、改正すべき箇所を改正し、加筆すべきものを加えていくのが望ましい。自民党案も公開討論を踏まえて進化させていく。