「自由民主」新春号 運動力問われる憲法改正
選挙通じて国民の理解を
自民党の機関紙「自由民主」1月7・14日合併号は令和2年新春特集で、総裁の安倍晋三首相はじめ党役員の新年あいさつ、経済対策や東京五輪に関するインタビューの次に憲法改正について見開き2ページで取り上げた。
1面に載る新年あいさつで首相は、「新しい時代への躍動感がみなぎる絶好のタイミングにあって、未来を見据えながら大きな改革に挑戦し、新たな国造りを進めてまいります。その道しるべとなるのが憲法です」と東京五輪がある今年、強調した。首相は在職日数最長を更新中だが、就任から意欲を示している憲法改正は、なお難問として残っている。
同紙は「挙党一致で憲法改正を」の見出しで細田博之党憲法改正推進本部長インタビューを載せ、また「国民運動を強力に展開」の見出しで同本部遊説・組織委員会、憲法研修会、政務調査会の地方政調会、女性局、青年局などの運動を紹介している。
リード文では、「わが党は昭和30年11月の結党以来、『現行憲法の自主的改正』を党是に掲げ、その実現に全力で取り組んできた」と訴えるが、その言葉通りだったわけではない。イデオロギー対立が激しかった東西冷戦時代、「護憲」を掲げる野党とマスコミは「改憲」を言葉狩りする批判を展開し、自民党は国会対策や選挙事情から憲法改正について沈黙した時期も長かった。
細田氏は同紙で、「国民世論の醸成も不可欠との考えから『憲法改正推進本部遊説・組織委員会』(委員長・古屋圭司衆院議員)を設置しました。同委員会を中心に国民運動も精力的に展開してまいります」と述べている。
また同紙は、「古屋委員長は、わが党が野党時代にスタートさせた『ふるさと対話集会』がその後の政権奪還に大きく寄与したとの見解を示し、草の根運動の重要性を指摘。その上で『国民運動をしっかりしていくことが、憲法審査会の議論を動かしていくことにつながる』と訴えた」として、憲法改正で国民運動の重要性を強調している。
旧社会党や共産党など野党・左翼勢力は、戦後から保守勢力に対し改憲=戦争のレッテル貼りで選挙に直結する「護憲」運動をした一方、自民党は必ずしも改憲で選挙をしてきたわけではない。この点、70年の後れを取っている。しかも、過去の自衛隊法、国連平和維持活動協力法、安保関連法など9条をめぐる対決法案では、野党の「違憲」攻撃に「合憲」を主張するため、改憲は叫ばなかった。
一方、連立与党の公明党は慎重な姿勢を示している。公明新聞は昨年12月にミャンマーを訪問した山口那津男代表が記者団の質問に答えた内容として、同12月25日付で「憲法改正は必ずしも優先順位が高くはなく、社会保障の充実や経済活性化、外交の安定に関心が高い」と述べ、「国会で幅広い合意が形成され、国民の理解も成熟していくことを見極めた上での改正手続きになるだろう」との認識を示している。
「優先順位が高くない」の言い方は自民党内にもあり山口氏に限ったことではないが、改正せず73年になろうとしている。今の自衛隊について軍ではないと真面目に外国に言えば日本は大嘘(うそ)つきだと言われる。
国民投票法が制定されて憲法改正発議が現実的な政治日程に上り得る時代になった今日、改憲政党はもっと憲法に対する考えや、見直しの必要性、国民が憲法改正案に1票を投じる意義を選挙運動で訴えていく必要があるだろう。選挙における改憲論議の下支えが「国民の理解の成熟」にもつながるはずである。
編集委員 窪田 伸雄