映画でイエスが同性愛者に


キリスト教会が猛反発 ブラジル
ネットフリックス配信

 リオデジャネイロ市に本拠地を置く人気コメディーグループ「ボルタ・ドス・フンドス」が今月3日に米動画配信大手ネットフリックスを通じて公開した映画をめぐり、ブラジル国内で激しい論議が巻き起こっている。

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ネットフリックス社の短編映画「キリスト最初の誘惑」の宣材写真(ネットフリックス社)

 問題になっているのは、同グループがイエス・キリストを同性愛者として描いた短編映画「キリスト最初の誘惑」。作品内では、イエスが30歳の誕生日を迎える日に、実家に同性愛者の愛人を連れてきて両親に紹介する場面が出てくる。また、イエスの誕生日パーティーには、3人の賢者が売春婦連れでイエスの実家を訪問するほか、イエスが自身の性別や救世主としての役割に疑問を抱く様子が描かれている。

 映画はカトリック教会や保守的な福音派キリスト教会、その信者から激しい批判を集めており、ネットフリックスに対して配信停止を求める署名が230万以上も集まっている。

 また、保守派の国会議員や著名牧師らが中心となってネットフリックス社を訴えており、「作品公開によって信者が精神的損害を受けている」として、100万レアル(約2700万円)の賠償金を求めるほか、同社に対する契約ボイコットを呼び掛けている。

 こうした中、リオデジャネイロ市にあるボルタ・ドス・フンドスの事務所が24日、極右集団によって火炎瓶攻撃される事件も発生した。事務所入り口で火災が発生したが、警備員によってすぐに消し止められ、けが人も出なかった。事件後、ブラジル国内の極右集団が「映画はイエス・キリストを冒涜(ぼうとく)している」との犯行声明を出した。すでに治安当局が犯人逮捕に向けた捜査を行っているという。

 攻撃を受けて、ボルタ・ドス・フンドスは「私たちは団結してこの国家に渦巻く憎悪を乗り越え、表現の自由が勝利することを信じている」との声明を発表した。

 同グループのインターネット交流サイト(SNS)には支援の声が届く一方で、ボルソナロ大統領の三男で下院議員のエドアルド・ボルソナロ氏は、ツイッターで「表現の自由は当然尊重されるべきだが、全国民の86%が抱く信仰を攻撃し傷つけるだけの価値があるのか」と問い掛けている。

 ブラジルは、世界最大の信者数を誇る「カトリック大国」として知られる。さらに、近年は福音派の信者が急増し、保守派ボルソナロ大統領の支持基盤となるなど、社会的にも大きな影響力を持ち始めている。

 一方、ブラジル最大の都市サンパウロでは、毎年6月に世界最大規模のゲイ・パレードが開催されるなど、世界有数の同性愛コミュニティーを持つ。

(サンパウロ 綾村悟)