女子競技への「男子」参加は不公平 米の16歳選手ら
過剰なトランスジェンダー擁護に異議
米国で心と体の性別が一致しないトランスジェンダーの権利を擁護する動きが広がる中、「生物学的な男性」が女子のスポーツ競技に参加することに反対の声が上がっている。東部コネティカット州の高校に通う女子選手ら3人は先月、身体的な優位性を持つ「男子」が女子競技に出場することで公平な競争の機会を奪われているとして、代理人を通じて連邦教育省に不服を申し立てた。(ワシントン・山崎洋介)
教育省に不服申し立て
「誰もがこのことを面白く思っていない。ただ、声を上げるだけの勇気がないだけだ」。先月、FOXニュースに出演した16歳のセリーナ・ソウルさんは、悔しさをにじませながら、現状の改善を訴えた。
セリーナさんは、コネティカット州で2月に行われた高校生対象の55メートル走に出場。しかし、そこには生物学的には男性だが、自らを女性と自認する2人の選手も参加していた。その2人はそれぞれ1、2位でゴールした。
レースは州を代表する選手が集う大会で、次のステージである東部ニューイングランド地区大会に出場するためには6位以内に入る必要があったが、セリーナさんは8位。2人の生物学的男性が「女子」として出場したため、スポーツ奨学金を得て大学に進学するなどのチャンスを失う形となった。
コネティカット州では、高校スポーツを統括する「インタースコラスティック競技会」が2017年に、たとえ生物学的な男性であったとしても、本人が自ら女性だと自認すれば女子競技として出場できることを決めた。
女子との身体能力の差は明らかで、例えばセリーナさんのレースに出場したトランスジェンダーの選手のうち1人は、州のスポーツ記録を10以上も塗り替えたという。
この現状ついて、セリーナさんはウォール・ストリート・ジャーナル紙に「私たち全員がほんの一瞬の時間を削り取るために非常に困難に訓練しているので、本当に悔しく心が痛むことだ。そして、われわれに勝ち目はない」と思いを語っている。
保守系法曹団体「自由防衛同盟」は先月17日、セリーナさんら3人の選手を代理して、教育省公民権局に不服を申し立てた。州が男子を女子のカテゴリーで競争させることを認めたことで、「少女たちの夢を閉ざし、機会を奪っている」と主張。これは教育の場で女性を差別から守る修正教育法第9条に違反するとし、調査した上で公平な競争の機会を取り戻すよう求めた。
極端なトランスジェンダー擁護の風潮の中、それに異議を唱えることは「差別」などと決め付けられかねない。不服を申し立てたのはコネティカット州の女子高校生3人だが、名前を公開したのはセリーナさんだけだった。自由防衛同盟によると、残りの2人は報復を恐れ、匿名を希望したという。
実際、セリーナさんは学校関係者やコーチからの報復を受けたり、ソーシャルメディアを通じて嫌がらせを受けたりしたと話す。
米メディアによると、コネティカット州のように、選手が申告した性別のみに基づいて女子競技に参加できる19州の一つ。こうした州ではスポーツで女性の活躍の機会が奪われるだけでなく、フットボールや格闘技などの激しい競技では負傷の恐れもあることが指摘されている。
しかし、議会はこうした流れに歯止めをかけるどころか、性的少数者(LGBT)の権利拡大をさらに推進しようとしている。5月に下院で「平等法案」が民主党議員の全員に加え、共和党議員の一部が賛成し通過した。これは黒人差別撤廃のために1964年に制定された公民権法に、性的指向と性自認を差別禁止の対象として加えるものだ。
これにより、身体的な変化を示す根拠を一切示さなくても生物学的な男性が女性選手として出場することが公民権の一つになると考えられている。2020年に民主党が大統領選と上下院選を制すれば、同法案が成立する可能性がある。
下院司法委員会が4月に開いた公聴会で証言したデューク大学ロースクールのドリアン・コールマン教授は、男女の身体能力の違いを科学的に説明した上で同法案に反対を表明し、成立すれば「女性だけのスポーツの終わりとなるだろう」と警告した。