トランプ氏、日米安保条約破棄に言及か


米通信社報道
「一方的」と不満

 米ブルームバーグ通信は24日、トランプ大統領が最近、日米安全保障条約を破棄することに言及したと報じた。側近との私的な会話の中で出た話で、政権当局者はそのような動きに出る可能性は極めて低いとしている。

トランプ大統領

トランプ大統領(AFP時事)

 同通信は関係者3人の証言として、トランプ氏は、米国が日本に防衛義務を負っているが、日本の自衛隊は米国を守ると規定していないことについて「一方的だ」と不満を漏らしたと伝えた。また、沖縄県の基地移転に関しても、「土地の収奪」だとし、米国は移設と引き換えに財政補償を受けるべきだとの考えを示したという。

 ただ、トランプ氏は、条約破棄に向けて実際に措置を取ったわけではないという。

 今回の報道の背景には、日本の参議院選後に本格化する日米貿易交渉をにらみ、安全保障を取引材料として、経済面で譲歩を引き出す狙いがトランプ政権側にあったことも考えられる。トランプ氏は2020年の大統領選での再選を目指す中、対日交渉で成果を挙げることに強い意欲を示している。

 トランプ氏は、2016年大統領選の選挙期間中から、米軍を駐留させている国に駐留経費の負担増を要求してきた。北大西洋条約機構(NATO)に対しては、米国の負担と比べてドイツなど他の加盟国の防衛支出が少な過ぎるとして、繰り返し不満を表明してきた。米メディアは今年1月、トランプ氏が私的な会話の中で、北大西洋条約機構(NATO)から離脱に言及していたとも報じていた。

 トランプ氏は先月下旬の訪日時に、横須賀基地の強襲揚陸艦「ワスプ」で演説し、「日米同盟はかつてないほど強固だ」と強調していた。米政権が、対中国、対北朝鮮政策などを推進する上で、在日米軍の存在は欠かせず、実際に日米同盟を破棄する動きに出る可能性は低い。

 一方で、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は、2021年に更新期限を迎える。同年4月以降の日本側負担について、米国から大幅な増額を求められる可能性も高まっている。

(ワシントン 山崎洋介)